笑顔はなかった。陸上の世界選手権(7月、米オレゴン州)代表選考会を兼ねた日本選手権最終日(12日、大阪・長居)、女子5000メートルは東京五輪9位の広中璃梨佳(21=日本郵政グループ)が15分11秒08で2位に入り、1万メートルに続いて代表内定となった。

 悔しさが残る内容だった。残り1周で東京五輪1500メートル8位入賞の田中希実(23=豊田自動織機)に突き放され、優勝を譲った。

「いけると思ったタイミングで仕掛けようと思ったけど、なかなか仕掛けられなかった。1万メートルのような展開ではダメだと感じた。国内で悔しいということは世界のレベルで勝てないと実感した」と広中。「もっと気を引き締めて、五輪の自分に勝つためにどういうところが足りないのか一つひとつ見直すいいきっかけになった」と語った。

 1万メートル日本選手権で連覇を達成した広中だったが、大会前は貧血の影響などで思いどおりの調整ができなかった。「そのときよりは練習は積めていた」としつつ「ここに来るにあたっていろんな葛藤もあった」と明かす。

 すでに参加標準記録は突破していたため、3位以内を狙うか連覇を狙うか自らを追い詰めてしまったという。「実際、苦しかったほうが大きかったけど、いろんな人に助けてもらいながら今日を迎えられたことが大きな財産」と思い悩んだ末に今大会を迎えていた。

 最終的に勝ちたいという思いが芽生えたが、わずかに及ばなかった。それでも広中は「この悔しさはいい悔しさだと思って、それを世界で必ずぶつけたい」と前を向いた。