異次元の強さを発揮した。陸上の世界選手権(7月、米オレゴン州)代表選考会を兼ねた日本選手権最終日(12日、大阪・長居)、女子5000メートルは東京五輪1500メートル8位入賞の田中希実(22=豊田自動織機)が15分5秒61で2年ぶり2度目の優勝。世界選手権の参加標準記録を突破し、1500メートルに続く代表内定となった。

 東京五輪9位の広中璃梨佳(21=日本郵政グループ)らと先頭集団を形成していた田中は残り1周で前に出ると、ライバルを突き放して1着でフィニッシュ。75分前には800メートル決勝に出場して2分4秒51で2位に入っていたが、観客のど肝を抜く驚異のラストスパートを披露した。

 レース後は「800メートルからも逃げずに完遂できた自信を得て5000メートルに迎えたことが気持ち的にもプラスになったかな」と充実の表情だった。

 3種目挑戦は容易なことではなかった。

 それでも「自分に負荷をかけてやっと火事場のばか力が出せる。何でもないときに一瞬、一瞬を大事にすることができず、今までも向き合っているつもりだけのこともあった」と田中。今大会に向けて自らを追い込んできた〝背水の覚悟〟は世界選手権にも生きてくるに違いない。