陸上の世界選手権(7月、米オレゴン州)代表選考会を兼ねた日本選手権(大阪・長居)は、12日に最終日を迎える。大会初日(9日)に注目を集めたのは、男子短距離のサニブラウン・ハキーム(23=タンブルウィードTC)。100メートル予選で全体トップの10秒11をマークすると、準決勝では10秒04と早くも世界選手権の参加標準記録を突破した。

 国内トップ選手が集う中、実力を見せつけたサニブラウンは〝凱旋レース〟の感想をこう語った。「海外で走るのとホームで走るのは違うなというのと、本当に去年の東京五輪は観客もいなかったので、こういうところで日本の観客のみなさんの前で走るのは気持ちいいなという感じですね」。昨夏の大舞台とは異なり、スタンドから送られる温かい拍手を肌で感じていたわけだ。

 新型コロナウイルス禍で過去2大会は観客数を制限してきた。一昨年は開催地の新潟在住者を対象に1日あたり上限2000人、昨年は1日あたり上限5000人だった。今年は3年ぶりに制限を撤廃。日本陸連担当者は「ようやく制限なくできるようになったので、そこは率直によかったなと」と語った。

 ところが、チケットの売り上げ枚数は「想定よりもちょっと厳しい」と苦戦しているようだ。実際、コロナ禍前の2019年日本選手権(博多)で100メートル決勝が行われた2日目は約1万4000人がスタンドを埋めた一方、前日は4000人弱だった。

 博多と長居では席種の数とともにチケット価格が異なる。また、ファン目線で考えると東京五輪前後では〝熱量〟も違うだろう。陸連担当者も「(会場の)キャパシティーやお客さんの特性も違うので、一概に比較できない」と説明したが、その差は歴然だ。

 続けて同担当者は「要因は1つではないと思う。(チケットの)金額なのかプロモーションの内容なのか複合的に絡み合っていると思う。そこに関しては後日、数字などを精査して総合的に見て考えたい」。観客の存在が選手のモチベーションになることは間違いない。今後も観客増への取り組みが求められそうだ。