【箱根路を沸かせる主役たち(5)】第98回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)で東洋大の主将・宮下隼人(4年)が〝4代目〟山の神に名乗り出る。

 小学生のころに東洋大の大先輩で〝2代目〟山の神こと柏原竜二の姿を見て、山登りの5区に憧れを抱いた。2年時の第96回大会では念願の5区を任されると、1時間10分25秒の区間新記録を樹立。しかし、前回大会は、のちに判明した右すねの疲労骨折による影響で「思うようなスピードがでなかった」と区間3位止まり。さらに最上級生となった今季は、全日本大学駅伝で10位に沈み、14年ぶりにシード落ち。最終8区を走った宮下は涙を流しながらゴールテープを切った。

 もう同じ悔しさは味わいたくない――。「今季の前半は(疲労骨折の回復が遅れ)練習が積めていなかったので練習を積もうという思いと、箱根で有終の美を飾って終わりたいという思いが強くなった」。全日本大学駅伝後は、朝練習が始まる1時間前の午前4時から個人練習をスタートさせるなど、背中でチームをけん引。他の選手も宮下に刺激を受け、チームの雰囲気が激変。酒井監督も「このままじゃ終われないとみんながまとまっている」と目を細めるほどだ。

 今季は苦しい戦いを強いられているが、抜群の安定感を誇る東洋大は、16大会連続でシード権を得られる10位以内を死守し「鉄紺のタスキ」の伝統は脈々と受け継がれている。3年連続となる5区での起用が有力視される宮下は「徐々にコンディションは上がっている。2年前に出した区間記録を最低限更新しなければいけない。前回は往路2位で終わったので、往路優勝、チームとして総合3位以内という目標を達成したい」と気合十分。最後の箱根路で新たな歴史を刻む。