2000年シドニー五輪女子マラソン金メダリストで日本陸連の高橋尚子理事(42)が陸連のずさんな対応に悲痛な声を上げた。

 世界選手権(8月、北京)の女子マラソン代表選考は、昨年11月の横浜国際で優勝した田中智美(27=第一生命)が落選し、1月の大阪国際で3位(日本人トップ)だった重友梨佐(27=天満屋)が選ばれた。増田明美氏(51)が「おかしい!」とかみつき大騒動となったが20日、高橋氏も「憤慨している」と怒りの胸中を明かした。

 高橋氏の本音は「田中さんが一歩有利だったと思います」。ただ、不満は選考そのものではなく、陸連の姿勢に対してだ。代表選考は記者会見直前に最終決定機関の理事会に諮られた。高橋氏は即座に異議を唱えたが、陸連側は「強い人を選んだ」の一点張り。

「何の説明もなく(理事会で)決議をとられることはなかった。『強い人を選んだ』というひと言だと伝わらない。ちゃんと説明があれば、ここまで大きなものにはならかった」と高橋氏は首をひねる。

 さらに疑問を感じたのは今回が初めてではなかったという。一昨年に理事に就任した高橋氏は当初から大会によってペースメーカーの導入にばらつきがあることを問題視していた。「ペースメーカーがいるといないでは私自身、全然違う」。経験に基づく訴えだった。ところが、陸連は「1年前に決まったことなので無理です」と改善の気配は示さなかったという。

 力不足を痛感し理事として「このままやっていていいのだろうか」と進退も考えたが「もう少し(選手のために)できたかなと思う」と戦っていく気持ちが芽生えた。

 現状では田中も重友も“被害者”に変わりない。「重友さんが頑張れば評価される。でも、今のままの選手の気持ちはかわいそう」。高橋氏の発言は誰もが納得するもの。陸連の責任ある対応が求められる。