【韓国・仁川3日発】公務員ランナーが猫と“和解”した!? アジア大会男子マラソンで、注目の川内優輝(27=埼玉県庁)はトップと4秒差の2時間12分42秒で銅メダルだった。松村康平(27=三菱重工長崎)が2時間12分39秒で銀メダル、カンボジア代表で出場したタレントの猫ひろし(37=本名・滝崎邦明)は完走者で最下位の14位に終わった。川内は金メダルだけを目標に悲壮な覚悟で臨んだが、舞台裏では意外にも“天敵”と交流を図っていたという。

 悔しさで涙がこみ上げる。「金も銀も見えていて、勝てなかった。本当に悔しいですよ。これで悔しくなかったらアスリートをやめたほうがいいですよ」。引き離されても食らいつき、最後まで松村、ハサン・マフブーブ(32=バーレーン)と金メダルを争った。しかし、トラック勝負でマフブーブが抜け、一番にゴールテープを切ることはできなかった。

 優勝すれば来年の世界選手権代表に内定というレース。「ここで内定を取れなければ、その後の選考レースには出ない」と悲壮な覚悟だった。今後を左右する大一番。「川内君は自分で自分にプレッシャーをかけて、レースに臨むタイプ」(宗猛・日本陸連男子中長距離マラソン部長)とレース前から緊張感を高めていた。

 一方、今大会には2011年にカンボジア国籍を取得した猫が同国代表で出場。今年6月、猫について問われた川内は「自己ベストが私のワースト記録より遅くて、何をどう相手にすればいいのか。終わってから健闘をたたえ合うのはもちろんだが、日本代表がカンボジア代表を応援するのはおかしい」と興奮気味に話し、タレントランナーを一切相手にしない姿勢を見せた。

 ところが、実情は違った。今大会は、ともに仁川市内の選手村に滞在。猫が本紙に打ち明ける。

「川内選手とは、お話をしましたよ。僕が納豆を持って来ていて、川内選手はカレーを持っているので一緒に食べたり。すごく食べるので、びっくりしました。僕は、とても同じ量は食べられないですね。それに『○○のお風呂が体にいいので、絶対に行ったほうがいいですよ』と勧めてくれました」

 自分に正直なため言動はきつく聞こえたが、周知の通り、川内は心優しき好青年。実際はレース前で緊張が高まる中、礼儀正しく、きちんと猫に接した。しかも相手にしないどころか、友好関係を築いたのだ。

 どこまでもスポーツマンらしい川内は、今後は公約通り国内選考レースには出ず、海外レースで実力を磨くという。2016年リオデジャネイロ五輪についても「また(日本代表に)戻ってこれたらそれでいいし、戻ってこれなかったら、そこまでの選手です」とキッパリ。もっと強い選手を目指し、独自の道を行く。