危険3倍マラソン「周回コース」

2012年08月04日 12時00分

 大会中盤にさしかかったロンドン五輪は、5日には“五輪の華”女子のマラソンが行われる。すでに「何が起こるかわからないコース」と評判だがその理由は、難所が多く選手同士の接触などが懸念されているから。一体なぜそんな危ないコース設定になったのか? そもそも、五輪のマラソンコースとして適しているのか? 専門家に聞いた。

 

 マラソンコースに難所はつきものだ。今回の五輪コースにも、道幅がわずか数メートルの狭い場所やデコボコした石畳が続くポイントがある。また、急角度の曲がり角も多く、選手同士が接触するアクシデントが懸念されている。

 

 だが大きな問題は、それぞれ危ないポイントを「3回通過しなければならない周回コース」を採用したこと。五輪では初の試みだが、その狙いは見やすさと警備にある。

 

 バッキンガム宮殿付近を発着点とし、名所をあちこち通過する“観光コース”で、一部の海外マラソン関係者からは「観客も楽しめる」と好評ではある。さらに、周回化することによって経費も抑えられ、警備の範囲が大幅に狭まる利点も大きい。

 

 だが、こんな周回コースに異議を唱えているのが、元日本陸連副会長の帖佐寛章氏(82)だ。「国際陸連のディアク会長もいる会議の場で、私は言った。マラソンには故事来歴があるからマラソンと言うのではないか。周回コースでやるのなら、その名前を降ろした方がいい。マラソンを冒瀆している、と」

 

 憤りも交えて語る帖佐氏は、国際マラソン・ロードレース協会の会長を20年間務めた重鎮だ。「ロンドンのように3周もするのは『マラソン』ではない」

 

 古代ギリシャの都市国家アテネが紀元前490年、侵攻したペルシャ軍を退けた「マラトンの戦い」を起源とするマラソンは往復や片道、ループ状のコースで開催。2004年アテネ五輪はマラトンからアテネ市内の競技場への片道コースだった。

 

 帖佐氏は「5日はどんなレースになるのか。場合によってはリポートを書こうと思っている」と注視する。“五輪の華”、難所を3度も通過する周回コースゆえの事故が起きなければいいが…。