新型コロナウイルス第3波の中で行われた第97回東京箱根間往復大学駅伝(2、3日)は、駒沢大の13年ぶり7度目となる総合優勝で幕を閉じた。本命だった昨年王者の青山学院大は往路でまさかの12位。意地の復路優勝を果たすも、総合4位に終わった。しかし名将・原晋監督(53)は納得の表情。陸上界の発展へ仰天プランをぶち上げていた。一方、沿道では“3密”が大量に発生。箱根駅伝を主催した関東学生陸上競技連盟(関東学連)のコロナ対応を巡り、波紋が広がっている。

 誰もが想像をしない展開だった。連覇を狙った青学大は5区での失速などが響き、往路は12位に沈んだ。だが原監督は復路のメンバーに「復路優勝するぞ」と鼓舞。選手たちも期待に応え、意地で2年ぶりの復路優勝を勝ち取った。名将は「総合優勝できなかったが、復路優勝できた。チーム青山の『絆大作戦』は、200%成功させたかったが、150%成功したと思う」と笑みを浮かべた。

 総合Vこそならなかったものの、原監督の表情は明るかった。その裏には“陸上界の未来”のために奮闘しているとの思いがあるからだ。今大会は伏兵の創価大が最終10区まで駒大と激戦を繰り広げるなど、新興勢力が上位争いに食い込む場面が見られたことから「全体的に力が拮抗してきた。関東の学生たちの力が上がってきた。私自身はずっと青山メソッドのノウハウを広めてきたつもり。惜しみなく開いてきたので、そういったところから陸上界が大きく変わってきたと思う。誰も言わないから俺が言うんだけど(笑い)。指導者や学生たちも明るくなったと思う」と声を弾ませた。

 しかも陸上界のさらなる発展を目標に、箱根駅伝の価値向上を目指す原監督はここで満足する器ではない。本紙の取材にこう話していた。
「やっぱり東京ドームをスタート、ゴールにするべきだと思う。東京ドームをスタートとゴールにすることによって、あそこで開会式、閉会式ができる。4万~5万人の観客を入れることによって、収入を上げることもできるし、電光掲示板を見ながら応援して、その最中にドーム内でさまざまなイベントもできる」

“東京ドーム発着プラン”に加え、3年後には箱根駅伝が100回大会を迎える。これを機に「やはり全国化。ただ、既得権益を働かせないといけないので、参加校を(現在の20校から)25校に拡大する。(シードの10校以外は)当然予選会からだけど、勝ち上がった地方の大学も出られるようにする。でも、当面は地方がいくら頑張っても最大5枠まで。逆に関東枠が増えるので、15番まで関東勢が独占したら25校、関東勢が出られる」と、双方にメリットのある改革案も提案した。

 一部で「メディアに出すぎ」と批判を浴びることもあるが、すべては陸上界を盛り上げるため。名将はこれからもいばらの道を走り続ける。