走れ!正直者・小池祐貴 9秒98!陸上100メートル日本人3人目の9秒台

2019年12月26日 11時00分

目指すは五輪の表彰台――。小池の照準は定まっている

【「令和」に刻む東京五輪 気になる人をインタビュー】どこまで記録を伸ばすのか。陸上男子短距離の小池祐貴(24=住友電工)は今年、100メートルで日本選手3人目の9秒台(9秒98)をマーク。9月の世界選手権は100メートルが準決勝敗退、200メートルが予選敗退と不本意な結果に終わったが、昨年のアジア大会では200メートルで金メダルを獲得するなど来年の東京五輪に向けて進化を続けている。今回の連載「『令和』に刻む東京五輪」では、注目されるのが苦手(?)という意外な素顔を持つスプリンターの胸の内に迫った。

 ――7月のダイヤモンドリーグ(DL)ロンドン大会で9秒98を記録するなど、注目を集めた今季を振り返って

 小池:すごいせわしない一年というか、半年だった。だいたい計画通りに事が進んで知りたいことを知れたし、経験したいことも経験できたことが収穫だった。

 ――海外レースの転戦では厳しさも味わった

 小池:ホテルの環境やサブトラックの状態。すごい選手がいっぱい出るのに、こんなところでアップするのかというのがあった。でもこれが当たり前で、記録を出せる人がいるということ。それを聞くだけでなく、実際にそういう環境で試合に出てみないと、次はこうすればいいというのが分からないので。

 ――ハイレベルな環境で刺激を受けたのでは

 小池:刺激というよりも慣れかな。隣に誰がいようとやることは変わらないし、隣が速いからといってぶつかる競技でもない。アップを見て勝てないのが分かっても動揺しなくなった。僕は刺激を受けるタイプではなく、現実というか、事実を事実として自分の肌で感じ、ちゃんと知識に落とし込めた。

 ――今季の活躍で一気に知名度が上がった

 小池:僕は注目されるのとかあまり好きじゃないし「応援しているよ」と期待されるより、正直なところ「放っておいてほしいな」というのはある。でも、あくまで自分が好きなことをやって好き勝手にやった結果、楽しんでくれているというのは純粋にうれしい。

 ――それでも注目される立場。メンタル面はどうコントロール

 小池:こういう(取材の)場でも素直に話したりするということかな。なんでも「ありがとうございます」ではなく、「それは嫌です」とか。結局、正直に話すのが一番だと思う。友達に「有名人になっていいな」と言われるけど、別に有名になりたいタイプでもないし(笑い)。そういったところが自分の処世術というか、スタンス、やり方なのかなと一年を通して感じた。変に愛想を振りまくより、自然にいるほうがいい。

 ――注目されることは苦手でも、大舞台では声援を受けながら集中する

 小池:大きい舞台でのレースは結果を出すべきところなので、小さい試合よりやる気が出るのは当然。言い方は悪いかもしれないが、小さい試合でいくら成績を出しても何も残らない。陸上競技を仕事にしているアスリートである以上、やるべきことは大きい試合で結果を出すということ。そこに向けて気持ちをつくっていくというのは大切だと思っている。

 ――来年には東京五輪を控えている

 小池:世界選手権で万全な状態で走れないと、話にならないことがよく分かった。今後はコーチにお任せしているが(考え方に)ズレはないと思うので室内レース出場を考えている。米国や欧州の選手は室内で体つくって一度シーズンオフにして、ピークを一発で夏に持っていくのが主流なので、それも経験かなと。合う、合わないはあると思うので取りあえずやるだけ経験しようと思う。

 ――狙うは日本選手初の五輪の表彰台だ

 小池:決勝に残ってしまえば「何かあるな」と思っている。実際にDLの会場でレベルの高さを感じたけど、世界選手権の決勝はみんなの持ってくるメンタルがまったく違うのがよく分かった。ちょっと難しいかもしれないけど、練習で「この走りができれば、メダル争いができるんじゃないかな」というところまで持っていきたい。

 ――100メートル、200メートルの両立は可能か

 小池:五輪は日程がタイトなので(種目を)絞ると思う。世界選手権では100(メートル)がうまくいかなかったので、もうちょっとやってみようかなと。(世界選手権で)決勝に残る予定だったのが、残らなかったので。取りあえず残るところまではちゃんとやりたい。

【波紋呼ぶ代表選考基準】2020年東京五輪の100メートル、200メートル代表選考基準については先日、日本陸連が「個人種目は原則として1種目のみとする」との選考要項を提案して波紋を広げたばかり。陸連側は金メダル獲得が期待される400メートルリレーに出場するメンバーの負担軽減を目的とし、麻場一徳強化委員長は「強引にやるのはよくない。いろんな意見を聞いた上で最終的な判断をしたい」と話した。

 しかし選手からは反対意見が相次いだ。小池も「(100メートル、200メートル、400メートルリレーすべて)できる選手もいると思うし、それは人によるのでは」と疑問視した。陸連は来年3月に開かれる理事会で、正式な選考要項としたい姿勢を示している。

☆こいけ・ゆうき 1995年5月13日生まれ。北海道小樽市出身。立命館慶祥高3年で100メートル、200メートルの北海道高校生記録を樹立するも、インターハイでは両種目で同学年の桐生祥秀に敗れた。慶応大に進学後、2017年に体育会競走部100代目主将に就任。日本インカレ200メートルを制した。18年アジア大会200メートルでは20秒23の自己ベストで金メダルを獲得。今年7月のDLロンドン大会100メートルで9秒98をマークした。173センチ、75キロ。

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