東京五輪のマラソン・競歩の「札幌開催問題」は、波紋が広がるばかりだ。国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長(65)と東京五輪組織委員会の森喜朗会長(82)による強引な決定には開催都市の東京から批判の声が噴出しているが、当の札幌サイドはどうか? 競技会場の所轄の担当者は「いまだ何の連絡もない」と焦る一方で、札幌市の“夜の街”すすきのは「五輪がやって来る!」と大歓迎ムード。ザワつきまくる現地をリポートする。

 札幌開催の決定に不快感を示す小池百合子都知事(67)は18日の定例会見でも「東京の冠がある中で、どうかと思う」と徹底抗戦の構えで、穏やかではない。日本陸上競技連盟や組織委の関係者からも戸惑いの声は多く、総合的に見ると東京サイドからは批判的な意見が多い。

 だが、現地の札幌サイドは好対照のリアクションだ。札幌市の秋元克広市長(63)は「驚くと同時に光栄です」と語り、札幌観光協会も「(2030年の)札幌五輪招致にもつながるし、大変喜ばしい」ともろ手を挙げる。特に札幌市中央区の歓楽街すすきのの歓迎ぶりは半端ではない。

 すすきの観光協会は本紙の取材に「海外の選手や関係者もたくさん来るので、街全体が盛り上がって元気になる。選手村がないので、選手は近隣ホテルに宿泊するでしょうから、競技の前の日は前夜祭ですね」と目を輝かせる。同協会の会員はいわゆる“健全”な飲食店のみ。「女性やお子さんが健全に楽しく、安心して飲食できる札幌を全世界に知ってもらうチャンスです」と意気込んでいる。

 だが、喜んでいるのは“健全店”だけではない。すすきのといえば、夜の風俗街が有名なのは言うまでもない。福岡・中洲と並び、サラリーマンの人気出張地として一、二を争う。ある風俗店は札幌開催の決定に「ありがたい限り。できれば朝ではなく夜にマラソンを開催してほしい」「間違いなく活性化する。期間限定で“すすきの五輪”を名乗ってほしい」とテンションが上がる。

 一方、競技の準備にあたる現地関係者は笑ってばかりもいられない。マラソン・競歩の競技会場の所轄となる札幌市スポーツ局国際大会担当部東京五輪担当課は18日夜の時点で「まだ何の連絡もありません」とヤキモキ。マラソン発着地点になる案が浮上している札幌ドームについて「過去にリレーマラソンの経験はあるが、そのノウハウは役立たない。札幌ドームで国際大会などのマラソンの大会は行ったことはないので」と不安視する。

 札幌ドームでは来年7月22~29日に東京五輪サッカー男女1次ラウンドが計10試合行われ、今の日程通りなら競技終了から中3日で女子マラソン(8月2日)となるため「撤去して、マラソン仕様にどう変えるか?」という課題も残されている。それでも最後は「開催するとなればしっかり受け止め、道庁とタッグを組んで全面的に協力したい。ワクワクしている」と前向きだ。

 30年に先立って札幌五輪開催といった雰囲気さえ漂っているが、果たして…。