“元祖9秒台男”誰よりも速く!ジェット桐生 ユーチューブチャンネル開設の意図は

2019年09月28日 11時00分

桐生は東京五輪に向けて心も体も集中している

【「令和」に刻む東京五輪 気になる人をインタビュー】誰よりも速く――。陸上男子100メートルで日本選手初の9秒台をマークした桐生祥秀(23=日本生命)が、本紙連載「『令和』に刻む東京五輪」にいよいよ登場だ。東京五輪前年の今季はアジア選手権を初制覇するなど結果を残した一方で、国内のライバルも次々に実力を発揮。高いレベルでしのぎを削っている。そんな中で、“元祖9秒台男”はこのほど「ユーチューブ」に自身のアカウントを開設。競技とともに注力する動画投稿に込めた思いとは? 気になるスプリンターの胸中に迫った。

 ――今季ここまでのコンディションはどうか

 桐生:今年はやりたいことをやれていると思う。思ったタイムではないこともあるけど、別に失敗している感じはない。

 ――東洋大時代から土江寛裕コーチ(45)とトレーニングに励んでいるが、心境に変化は

 桐生:(社会人1年目の)昨年はプロとしての自覚が少なかったし、大学時代は部活動なので、五輪に出ていても大学の一部という感じだった。でも、今は生活がかかっている。それに最近は、土江先生に茂さん(小島茂之コーチ=40)、トレーナーさんと“チーム桐生”でしっかりできている。

 ――サニブラウン・ハキーム(20=フロリダ大)、小池祐貴(24=住友電工)が次々と9秒台をマークしている現状について

 桐生:自分は国際大会で決勝に残って勝負したいというのがあるから、日本人がどうというのはあまり考えていない。同級生の小池選手にしても意識していないことはないけど、違うレーンにもいろんなライバルがいる。そういうのもあって一番は自分の走りをすることに意識を置いている。

 ――そんな国内のライバルも400メートルリレーでは強力な味方になる

 桐生:リレーはここ最近「メダルが取れて当たり前」という雰囲気。ファンの方々も「東京五輪は何色だろう」となっていると思うので、しっかり結果を残したい。アンカーは個人的に好きだけど、走順はメンバーの適性が大切。だからアンカーが空いていないとき、3走しかないことなどもあるので、そういうことも考えながらやっている。

 ――7月下旬にユーチューブで自身のアカウントを作成した。周囲の反応はどうか

 桐生:まだ始めたばっかりなので分からない。見てくれている人たちがどういうものを求めているのか、自分がやりたいことも含めてまだ手探りでやっている状態。ユーチューブは多分、今後も残っていく媒体だと思うので、引退するまでずっとやっていきたい。

 ――なぜ動画で発信するようになったのか

 桐生:ツイッターなどの質問を「字」で返すのが苦手で、表情がないとすごく失礼に捉えられることもある。返信には絵文字なんかも使わないし。今、自分が考えていることを残したいと思ったので自分のためでもあるし、ファンの方々のためのチャンネルでもある。

 ――将来は指導にも興味がある

 桐生:小学生の陸上教室をつくりたいなと。ただ、そういうこともどうやっていけばいいのか、どういう言葉だったら伝わるのか。発信することでファンの層も分かるだろうし、いろいろやってみてマイナスはないと考えた。

 ――“桐生2世”を育てたい

 桐生:それは全くない。僕は陸上選手にならなくてもいいと思っている。(所属先の)日本生命でやったのも陸上教室というより、小学生を対象にしたランニング。陸上選手を伸ばしたいと思ったら、小学生を対象にはしない。今は中高生よりも下の層を広げるというか、ランニングが楽しいなと感じてもらえたら。まだ自分のスペック的にも小学生向けしかできないと思っているので。

 ――他の競技を経験した自身の経験も大きい

 桐生:親に言われてやっていたら、僕はもう陸上を辞めていた。習い事を無理やりやらされるのがあまり好きじゃなかった。小学生でも、親が言ってもやりたくないことってあると思う。僕は小学校でサッカーをやっていて偶然、陸上に出会ったので、そういう機会があればいいかなと。「桐生さんと出会ったから陸上を始めた」という子が増えたらうれしい。

 ――大目標の東京五輪が来年に迫っている

 桐生:自分の現役中に東京で(五輪が)あることは二度とないと思うので、100メートルもリレーもいい結果を出したい。100メートルでは日本選手初のファイナリストにも入れたらと思う。

【世界陸上で100メートル自己ベスト更新に期待】桐生は27日開幕の世界選手権(カタール・ドーハ)の日本代表に選出され、男子100メートルと同400メートルリレーに出場予定だ。100メートル(予選27日=日本時間28日、準決勝&決勝28日=同29日)ではコンスタントに10秒0台をマークしていることから自己ベスト(9秒98)更新や決勝進出に期待がかかる。一方、リオ五輪で銀メダルを獲得した400メートルリレー(予選10月4日=同5日、決勝10月5日=同6日)では3走を務める。アンカーのサニブラウンにバトンを託して金メダルを目指す。来年の東京五輪へ向けても試金石となる大事なレースだ。

☆きりゅう・よしひで 1995年12月15日生まれ。滋賀・彦根市出身。小学生時代はサッカーを経験し、中学進学を機に陸上を始める。洛南高3年時には織田記念男子100メートル予選で10秒01をマーク。2016年リオ五輪では同400メートルリレーで日本の銀メダル獲得に貢献。東洋大4年の日本インカレ100メートル決勝で9秒98の日本新記録(当時)を樹立した。今年4月のアジア選手権同100メートルで初の金メダルを獲得。レース前はゆずの名曲「栄光の架橋」でモチベーションを高める。176センチ、70キロ。