「9秒99」サニブラウンの“東京問題”

2019年05月14日 11時00分

サニブラウン

 日本陸上界にとっては喜んでばかりもいられないということか。11日(日本時間12日)に米アーカンソー州フェイエットビルで行われた大学南東地区選手権100メートル決勝で、サニブラウン・ハキーム(20=米フロリダ大)が、日本歴代2位で桐生祥秀(23=日本生命)に続く日本人2人目の9秒台となる9秒99をマークして優勝。日本勢で五輪の参加標準記録を突破した第1号となった。来年の東京五輪に向けて明るいニュースだが、日本の“お家芸”にとっては悩ましい問題も浮上している。

 17年秋から進学したフロリダ大で走りに磨きをかけているサニブラウンが、しっかりと結果を出した。スタートは「もっと出られた」と振り返ったように完璧ではなかったが、スムーズな加速からフィニッシュして速報タイムは10秒00。そこから0秒01繰り上がって、日本人2人目の9秒台突入選手となったが、本人は「いつも通りの走りをして、フィニッシュした感じ」と淡々と語った。

 とはいえ、まだまだ伸びしろが見込めるだけに東京五輪での期待は高まるばかり。日本歴代5位となる10秒02のタイムを持つ朝原宣治氏(46)は「驚かないくらいに期待が大きかった。ついに出たけど、やっぱりという気持ちもある。ぴったり照準を合わせてきたら、個人でもメダルを狙えると思っている」と評価した。

 日本が得意とする400メートルリレーにとっても“戦力アップ”だ。サニブラウンと桐生の2人が9秒台で、山県亮太(26=セイコー)が10秒00。これに10秒07の多田修平(22=関学大)、10秒08のケンブリッジ飛鳥(25=ナイキ)と飯塚翔太(27=ミズノ)が持ちタイムで続く。東京五輪では過去最強布陣で臨むことになりそうだが、問題がないわけではない。

 11日に行われた陸上・世界リレー(横浜市)の400メートルリレーで、メダルが期待された日本は予選でまさかのバトンミスにより失格。3走の小池祐貴(24=住友電工)からアンカーの桐生にバトンを渡す際に“お手玉”するような形となり、違反と判定された。小池は「不測の事態への対応が遅れた。手の位置が桐生と互いに合わなかった」。

 ケンブリッジと飯塚が不在とはいえ、お家芸だったはずのバトンパスでミスが起きたことは、図らずもサニブラウンへの不安につながっている。
 日本陸連の土江寛裕・男子短距離五輪強化コーチ(44)はサニブラウンの快走を「非常に追い風」と頬を緩め、山崎一彦トラック&フィールドディレクター(48)も「これでさらに厚みと可能性が広がった。世界選手権(9月27日開幕、ドーハ)が楽しみになった」と今後はリレーメンバーを柔軟に入れ替えることを示唆した。

 ただサニブラウンは日本代表のリレーで主要大会を走っていないため「どういうふうに迎え入れるか、考えないといけない」と土江コーチは思案をめぐらせる。実際、サニブラウンを“最終兵器”として加えたとしても、バトン技術の経験値は圧倒的に低いだけに世界リレーの二の舞いとならない保証はない。

 サニブラウンのフロリダ大に進学時からこの問題は浮上していたが、1年たっても解消できていない。五輪まではあと1年。最終兵器をどう機能させるか、金メダル獲得への大きなカギとなりそうだ。