マラソン女子の未来は…。2020年東京五輪代表選考会「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」(来年9月)の出場権獲得をかけたさいたま国際マラソン(9日、さいたまスーパーアリーナ発着)で、今田麻里絵(28=岩谷産業)が2時間29分35秒で自己ベストを更新し日本人トップでゴール(全体4位)するも、日本陸連が決めたタイムに35秒届かずMGC出場権を逃した。上げ潮ムードの日本男子に比べ、選手層の薄さを露呈した日本女子は東京五輪に間に合うのか。

 今田は「後半に入りアップダウンと風の影響もあり、左足がしびれ始めて思うように動かなかった。MGC出場権は獲得できなかったが、兆しは見えた」と悔しさをにじませつつ語った。

 日本陸連の瀬古利彦マラソン強化戦略プロジェクトリーダー(62)が期待を寄せていた“忍者走り”の清田真央(25=スズキ浜松AC)も、日本人2位(全体5位)ながらMGC出場権を獲得できなかった。

 日本記録保持者の大迫傑(27=ナイキ)や前日本記録保持者の設楽悠太(26=ホンダ)、2日の福岡国際マラソンを好タイムで制した服部勇馬(25=トヨタ自動車)、“市民ランナー”で4月のボストン・マラソンを制した川内優輝(31=埼玉県庁)らスター揃いの男子に比べると、女子はやはり選手層の薄さを感じざるを得ない。

 瀬古氏も「MGC獲得者が出なかったのは寂しい。(2時間)30分を切ったのが1人で、どの選手も30キロからの後半にタイムが落ちている。これからの練習で修正しなければならない」と神妙な面持ちで振り返った。

 2015年に始まったさいたま国際は今年から12月開催に変更。これまでの11月開催では駅伝との兼ね合いで有力選手がエントリーしにくいとも指摘され、トップ選手が出場しやすいよう配慮された。コースも一部が変更され、起伏がやや減った。レースでは2年ぶりにペースメーカーが先導し、好記録への環境が整備されたが、2年連続MGC突破者が出ない結果に終わった。この原因を考えなければならないのは明白だろう。

 河野匡長距離・マラソンディレクター(58)は「設定タイムというのはいろんな角度から見て決まったもの。そのラインに近づいてはきているので、クリアした上で世界と戦える選手になってほしい」と指摘した上で「(16年)リオ五輪までを見ていてのシミュレーションではMGCまでに12名突破(現在8人)。それを超えないとレベルの底上げになったと言えないが、精力的に狙っていると聞いている。次の大会に期待したい」と前向きに語ったが…。

 いずれにせよ東京五輪まで残り2年を切った中で、「惜しかった」では五輪はおろか選考レースにすら出場できない。河野氏の言うように次戦の大阪国際女子マラソン(来年1月27日)で、世界と戦えるタイムでMGC出場権を得る選手か現れるかが、東京で戦える一つの指標と言えそうだ。