【韓国・平昌20日発】フリースタイルスキー女子ハーフパイプ(HP)決勝で、ソチ五輪銅メダルの小野塚彩那(29=石打丸山ク)は82・20点で5位に終わり、2大会連続のメダル獲得はならなかった。世界選手権女王として挑んだものの、世界の進化の速さの前に完敗。意識の高さは人一倍だったが、表彰台には届かなかった。競技に情熱を注いできた日本女子の第一人者が描く今後の夢とは――。

 5位入賞とはいえ、上位との差は歴然としていた。900(2回転半)が最高の小野塚に対し、金メダルのキャシー・シャープ(25=カナダ)、銀メダルのマリー・マルティノ(33=フランス)は1080(3回転)を軽々と決める技術の持ち主。ルーティンには自信を持っていた小野塚も「上位の2人に関しては別」と認めざるを得ない完敗だった。

 ソチ五輪後も、2017年の世界選手権で優勝するなど活躍。その中で代表チームにも活を入れてきた。

「チームの中の雰囲気が、試合に勝てるチームではない」

 そう漏らしたのは昨年10月だ。HPチームの中で小野塚の実力は突出。他の選手の意識と大きなズレが生じていた。

 決勝前に予選落ちした選手から「私には関係ない」と言われたこともある。無意識な発言だったが、傷ついた。「私は別に仲良しこよしでやろうと思ってない」。小野塚は上層部に直談判し、チーム全体にトップの心構えを植え付けた。

 それでも世界の壁は厚かった。昨年12月には脳振とうを起こし、満足に練習ができなかった。今後については「この先のことは考えられない」と白紙であることを表明した。私生活では結婚しており、競技を一時中断する可能性もある。

 一方で、小野塚は競技以外の夢も抱いている。「いろんな人たちが楽しめるイベントをやりたい。たとえば、HPの大会とかモーグルの大会とかは、それが好きな人だけしか行かない。そういうのではなくて、いろんなジャンルのスキーヤーが一つのイベントに参加して、スキーを履いて参加できるイベントが何か一つあればいいんじゃないかな」

 競技者としてだけでなく、プロデューサーとして業界の底上げに挑戦する。2歳でスキーを始め、アルペン競技、基礎スキーからHPに転向し、豊富な経験を誇る小野塚ならではの総合スキーイベントの開催だ。

 日本版「Xゲーム」のような盛り上がりを目指す。「もっともっと普及活動を優先的にしなきゃいけないのかなと思います。アメリカの観客とか層を見てても、ちっちゃい子からおじいちゃん、おばあちゃんもいるし、そういうふうにメジャーになっていかないといけない。それをやっていくのが私たちの世代の使命」と語る目はまだ、輝きを失っていない。小野塚の“次の一歩”に大きな注目が集まる。