【韓国・平昌15日発】スノーボード・ハーフパイプ男子で2大会連続の銀メダルを獲得した平野歩夢(19=木下グループ)にスケートボード界から熱烈オファーが届いた。日本ローラースポーツ連盟が5月に新潟・妙高で開催を予定する「パーク」第1回日本選手権に「ぜひエントリーしてほしい」と参戦を打診。日本人初の夏冬メダリストという偉業に向け、歴史的な第一歩になるのか。

 スノボ界の“カリスマ”ショーン・ホワイト(31=米国)との死闘から一夜明け、平昌のジャパンハウスで会見した平野は、スケートボードでの東京五輪出場に言及した。

「ここから目指すのは、時間のない中ですごいハードなトレーニングになる。まだはっきり決めてない部分というのをこれからしっかり整理して考えられたら。当然、可能性があればという形で考えています」

 スノーボードと同時期に始め、長いキャリアを持つが、やはりそう簡単には決められない。ホワイトに僅差で敗れ「素直に受け入れる部分と悔しい部分が残っている。リベンジしに4年後、また出れれば」との思いも交錯する。2022年北京五輪での金メダル獲得を見据え、ダブルコーク1440(縦2回転、横4回転)を2回から3回に増やす構想を明かすなど、本業でやるべき課題が山積しているのが現状だ。

 しかし、東京五輪のスター候補にもなり得る平野を周囲は放っておかなかった。日本ローラースポーツ連盟幹部は本紙の取材に対し、「パーク」の第1回日本選手権に向け「ぜひ、エントリーしてチャレンジしてもらいたい」と平野に出場を呼びかけた。

 スケートボードは東京五輪で「パーク」と「ストリート」の2種目が行われる。同幹部は平野のストリート参戦については「彼の得意とするジャンルじゃないし、現役でバンバンやっている選手がいる。その中に入り込むのはきついと思う」と否定的だ。

 一方、パークへの参戦なら道が開けるという。平野が得意とするのは「バート」(バーチカル)と呼ばれる種目。「垂直」を意味し「ランページ(ランプ)」と呼ばれるハーフパイプで技の難易度を競う。米国の家庭用プールの水を抜いて遊んだのがルーツとされ、米国で特に人気が高い。

「4年前、テレビで彼がスケートボードをしている映像が結構、流れていた。彼の滑りは非常に上手。日本にはパークそのものがないので、やっている人が少ない」(同幹部)。パークはランページでスノーボードの技術を生かせるとあって、適応能力は高いと見ている。

 東京五輪まで「2年」という制約がある中で、決断を迷っている時間はあまりない。国内トップ選手が初めて集う日本選手権で勢力図を確認しておくだけでも参戦メリットはある。夏季Xゲームの「バート」で優勝経験のあるホワイトも今回の金メダル獲得後、東京五輪への挑戦に前向きな姿勢を示した。「歩夢は次元が違う」(村上大輔コーチ)というスケートボードの腕前は5月に披露されるのか。