【スピードスケート】銀メダル高木美保の魂に火をつけた「丸いね」

2018年02月13日 19時00分

銀メダルを獲得し、観客の歓声に応える高木美帆

【韓国・江陵12日発】中長距離のエースが目覚めたひと言は――。平昌五輪のスピードケート女子1500メートルで高木美帆(23=日体大助手)が1分54秒55をマークし、銀メダルに輝いた。金メダルのイレイン・ブスト(31=オランダ)とは0・2秒差と、頂点にあと一歩。15歳でバンクーバー五輪に出場した天才少女が8年の時を経て、スピードスケートの個人種目で日本人女子初の銀メダルを手にした裏には、前回ソチ五輪の代表落ちやさまざまな出会いがあった。

「掲示板を見て2番と分かった時にはメダルを取れて良かったと思ったんですけど、僅差だったので、悔しい思いっていうのが後から込み上げてきた」。高木美にとっては喜びと悔しさが入り混じった銀メダルだった。

 その後は3年間指導を受けてきたオランダ出身のヨハン・デビット・コーチ(38)と抱き合い涙。「うれし涙よりは悔し涙の方が強いんですけど、ここまで来ることができたって思いも(自分の中に)あってほしいなと思います」。複雑な涙の訳を説明した。

 今季W杯で1500メートルは4戦4勝と圧倒的な強さを見せ、大本命となった高木美の前に立ちはだかったのはバンクーバー五輪金メダリストにしてソチ五輪銀メダリスト。かつては勝負を諦めるような相手だった。

 ヨハン・コーチの指導を受け始めたころ、大会会場で「やっぱりブストは強い、勝てないねという感じで見ていたら、ヨハンに『どうして他の人にできるのに自分はできないと思うの?』と聞かれたんです」。怒られたわけではなく、不思議がられた。

 すぐには心に響かなかったが、この日のメダリスト会見ではブストの隣に座り「オランダ勢にできることは私たちにもできる」とキッパリ。ここまで男女3種目で金メダルを独占する“王国”に、残る2種目、1000メートル、団体追い抜き(パシュート)でのリベンジを誓った。

 初めて五輪に出場した8年前は体調管理もできていなかった。「高校の途中ぐらいまでは甘いものもバリバリ食べていましたね。やめるのもストレスだと思って」

 そんな高木を変えたのは昨年末、引退したバンクーバー五輪男子500メートル銀メダルの長島圭一郎氏(35)のひと言だった。「ズバッと『太ってるね』って言われたんです。いや『丸いね』だったかな。それで変わらなきゃいけないと思った」

 若い女性としても、アスリートとしてもショッキングな言葉に一念発起。母・美佐子さん(55)の協力も受け、弁当から揚げ物を排除するとともに、甘いものも控えるようになった。ヨハン・コーチは体重のコントロールなど、体調管理にも厳しいが「出会ったころには甘いものをもう欲しないようになってました」。今ではキツイ言葉を放ってくれた長島氏に感謝している。

 4年前、ソチ五輪の代表落ちも大きな転機だった。「あれがなくても強い選手になっていたと思うけど、ここまでだったかどうか」(日本スケート連盟幹部)

 バンクーバーと入れ替わるように今度は姉の菜那(25=日本電産サンキョー)が五輪に出場。「姉は1年前から『五輪に行きたい』とずっと言っていたけど、私はそんなにガツガツしなくてもって感じでした。その気持ちの差が行動にも表れるんだと感じた」。どちらかといえば、無欲だった天才少女が、貪欲に結果を追い求めるようになった。

 中長距離のエースは14日の1000メートルで短距離の女王、小平奈緒(31=相沢病院)と金銀独占も期待される直接対決。これまでの成績は世界記録保持者の小平が優勢だが“他の人にできることは私にもできる”はずだ。オランダ勢はもちろん、小平にも真正面から挑戦する。