ノルディックスキー・ジャンプ女子で平昌五輪(2月9日開幕)の金メダルを狙うのが伊藤有希(23=土屋ホーム)だ。昨季はW杯通算5勝を挙げ、高梨沙羅(21=クラレ)に次ぐ個人総合2位に躍進。21日のW杯蔵王大会では今季最高の2位に入り、調子を上げている。ソチ五輪に続く2度目の五輪で、所属で兼任監督を務める“レジェンド”葛西紀明(45=土屋ホーム)に恩返しができるか。大舞台に向けて燃える胸中に迫った。

 ――昨季は念願のW杯初優勝。心境の変化は

 伊藤:いや、特にないですね。もう、過ぎたことといえば過ぎたことなので。そこをずっと振り返ってもしょうがないですし、特に何も変化はないです。勝てたことによって今までのトレーニングは大きくは間違ってなかったんだなっていう確認にはなったと思う。トレーニングの方向性を決めるに当たってはすごくプラスになりました。

 ――2大会連続銀メダル獲得の世界選手権では勝負強さが光った

 伊藤:自分ではそういう意識はないので、そう言っていただけるとすごいありがたいんですけど、自分としては今まで通り同じ準備をして、同じように臨むことが大事だと思っていたんです。ただ、ビッグゲームということもあって当日は(葛西)監督をはじめとして男子の選手も応援に来てくださったり、周りがすごく雰囲気を盛り上げてくださった。自分もその雰囲気に盛り上げていただいて、世界選手権ではうまくいったんじゃないかなと思っています。 

 ――プレッシャーに強いように見える

 伊藤:プレッシャーは基本的には感じないというか「プレッシャーは感じるからプレッシャーなんだ」という話も聞いたことがある。自分としては応援が自分のパワーになると思っているので、特に感じはしないですね。昔から? そうですね。プレッシャーというか、自分があんまり期待されているっていう実感を覚えたことがないです。フフフ…。

 ――上位が拮抗している女子ジャンプで金メダルを取るポイントは

 伊藤:自分はもう、自分のできることに集中するしかないので、自分次第だとは思います。自分のパフォーマンスができた時には他の運だったり、すべてかみ合ってくれないと、メダルは難しいんじゃないかなと。平昌はすごく風の強い場所なので、当日どうなるのかなっていう感じはしますね。

 ――これまで悩まされてきた飛び出しの出遅れグセはどう改善した

 伊藤:まだ克服はできていないので、研究中です。テークオフの場所を目で見て「ここだ、ここだ」と言って立つと、やっぱり遅れてしまうんですけど感覚ですね。重力を感じてそれをハネ返すように飛ぶっていうのを意識して、少し良くなったかなと思います。

 ――空中で両手を広げる動作など葛西監督のジャンプに似ている

 伊藤:よく言われますね。ここ1~2年は言われます。でも、自分としては人のジャンプをまねするのはすごく危険なことだなと思っています。私は絶対できないですけど、もし監督のジャンプを100%コピーできたとしても、監督と骨格も違いますし、持っている運動神経も雲泥の差がある。それよりは、いかに自分に合ったジャンプを早く見つけるかだと思っているので、特にまねしたりはしてないですね。むしろ、自分のオリジナリティーを出していきたいなって思います。

 ――日頃からお世話になっている葛西ファミリーに五輪で恩返ししたい気持ちは

 伊藤:もちろん、ありますね。奥様は葛西さんのメダルを何十個もかけてもらっていると思うので、私がもし取れたとしたら、もちろんかけてもらいたいなと思うんですけど、喜んでいただけたらと思います。ご夫妻にも(長女の)璃乃ちゃんにも。

 ――出身地の北海道・下川町はその葛西選手をはじめ多くの五輪選手を輩出している

 伊藤:葛西さんもその一人なんですけど、小さい時からずっと下川町の先輩たちの背中を追いかけてきました。「五輪で金メダルを取る」という夢も先輩たちが抱かせてくれた夢なので、下川の先輩たちだったり、お兄ちゃんたちはずっと自分の尊敬する、憧れの存在ですね。

☆いとう・ゆうき=1994年5月10日生まれ。北海道・下川町出身。両親はスキー選手で4歳からジャンプを始める。2011年、コンチネンタルカップレディース蔵王大会で国際大会初勝利。13年、土屋ホーム入社。15年&17年世界選手権銀メダル。161センチ、47キロ。