ノルディックスキー・ジャンプ女子のW杯個人第6戦は14日、札幌市の宮の森ジャンプ競技場(HS100メートル、K点90メートル)で行われ、平昌五輪代表の高梨沙羅(21=クラレ)が合計231・4点で今季自己最高の2位に入った。W杯歴代単独最多の通算54勝は持ち越しとなったが「2強」の一角を崩し、追い上げムードは加速。驚きの“魔法使いトレ”を敢行するなど気合も乗っており、19日からの山形・蔵王大会で逆転を狙う。
マーレン・ルンビ(23=ノルウェー)が3連勝で今季4勝目を挙げた一方で、高梨が7大会連続で優勝を逃したのは初めてだ。しかし、本人は「なんとか食らいついて勝てるように頑張っていきたい」。第5戦まで表彰台の1、2位をルンビとともに独占していたカタリナ・アルトハウス(21=ドイツ)が2本目にミスをしたが、高梨は90メートル、93メートルとK点越えのジャンプを揃えた。対アルトハウスでは価値ある“1勝”だ。
悲願の金メダル獲得を誓う平昌五輪。その前哨戦となるW杯で「優勝」という2文字がなかなかつかめない中でも、高梨は周囲を気にせず、やるべきことに集中している。象徴的なシーンが試合前にあった。
この日は朝から大雪となり、会場では建物の入り口から雪を外に掃き出す作業が行われていた。そこへウオーミングアップのため姿を現した高梨は、キョロキョロと周りを見渡すと、掃除をしていた女性からほうきを借りた。
そして階段に上がり、ほうきを首の後ろに乗せてジャンプを繰り返す。飛び出しの確認だった。一般客が利用するトイレが近くにあったため人だかりができたが、気にしない。5分後、女性にほうきを返し、お礼を言って立ち去った。
高梨のみならず、棒を使う練習はジャンプ選手にとって定番になっている。高梨も「棒状のものを探していたんです。足の使い方を確認するためですね」と話した。
2位とはいえ、ルンビには飛距離にして10メートルの差をつけられた。全日本スキー連盟の斉藤智治ジャンプ部長(61)も「そんなに甘くないよ。あれだけルンビが調子がいいからね」と認める完敗だった。ただ、高梨は「自分の技術も着実に前進はできているかなと思う。やるべきことをやっていくしかない」ときっぱり。課題を一つひとつクリアしながら、ルンビの背中を追っていく。