陸上世界選手権(ロンドン)男子400メートルリレー銅メダルの多田修平(21=関学大)が新たな可能性を広げている。

 初出場となった世界選手権では100メートルで準決勝に進出。その勢いに乗り、リレーでは重圧のかかる1走を務め、メダル獲得に大きく貢献した。さらに直後のユニバーシアード競技大会(台北)ではリレーで米国を破り、金メダルを奪取。若い世代を“多田効果”でけん引してみせた。

 ただ、世界選手権とユニバーシアードでは内容はやや異なる。多田は世界選手権100メートル金メダルのジャスティン・ガトリン(35=米国)も驚くロケットスタートと先行力が売りだ。そのため、世界選手権では1走を務めたが、ユニバーシアードでは2走だった。

 関係者によれば、理由は2つ。ユニバーシアードのリレーメンバーにはバトンが苦手な選手がおり、その選手に1走かアンカーを任せる案が当初から有力だった。また、1走はトラックのカーブを曲がりながら加速していく。多田はより持ち味を発揮できるのは直線が主体の2走とし、適性を訴えていた。チームは「他の選手で立ち遅れた場合、アンカーで挽回しきれない。2走で逃げようということ」(関係者)と理解し、好結果を収める要因となった。

 同じことは3年後の東京五輪にもあてはまる。世界選手権でリレーを走らなかったサニブラウン・ハキーム(18=東京陸協)がメンバー入りすると、今のままのバトン技術では、1走かアンカーへの起用が浮上する。そうなった場合、多田が2走も走れるメリットは大きい。今後は“ジョーカー”としての役割も期待できそうだ。