ノルディックスキーの夏の欧州国際大会、グランプリ(GP)ジャンプに出場していた高梨沙羅(20=クラレ)が22日、羽田空港に帰国した。チェコ・フレンシュタートで行われたGP第2戦(18日)で、スキー板の長さに対する体重不足でまさかの失格。「あってはいけないこと」と再発防止を誓ったが、いったい何があったのか。騒動の舞台裏を追った。

 失格翌日の第3戦で優勝し「自分に倍返し」と珍しく感情をむき出しにした高梨だが「まだ腹立たしい」と自身への怒りは収まっていなかった。それでも、失敗やミスに対して言い訳をしないのが“沙羅流”。「チームのスタッフはもちろんですけど、周りの選手にも申し訳ない気持ち」と話し、陣営や支援者に頭を下げた。

 一方で、本当に失格だったのかという疑念も浮上している。

 高梨によれば、大会当日、規定より200グラム多いことを確認し、スタート台に立った。それが、ジャンプ後の計量では逆に200グラム足りずに失格になった。暑かったとはいえ、400グラムも下がったことになる。途中で水分補給もしっかり行っていたというから、なおさら不可解だ。

 国際スキー連盟(FIS)による測定も正確だったとは言えない。今回、体重測定はじゅうたんの上で行われたが、これが影響した可能性は否定できない。「体重は量る場所によって、数値が違う。コンテナの中なので、下が柔らかかったり、傾いているだけで変わる」(関係者)

 日本の選手は全員が遠征に体重計を持参。高梨も毎日、体重をチェックしていた。200グラム余裕を持たせていたのは長年の経験に基づく習慣だっただけに「400グラムなくなることはなかなかない。FISの体重計と自分の体重計に誤差があるのかもしれない…」と悔しさをこらえた。

 不安定なのは、同じくスキー板の長さに関わる身長測定も同じ。「小学校の測定のように、おじさんが手作業でやる印象」(別の関係者)とあって、誤差が生じても不思議はない。前出の関係者は「一概に(高梨の体重が)本当に足りなかったのかと厳密には言えないんですけど、それがルールなので…。そんなに気にすることじゃない。失格? あ、ふ~んぐらいですね」と意に介さない。悪夢を見たが、気持ちの切り替えに時間はかからないはずだ。