【英国・ロンドン10日(日本時間11日)発】陸上の世界選手権第7日、男子200メートル決勝に史上最年少記録となる18歳5か月で進出したサニブラウン・ハキーム(東京陸協)は20秒63で7位となり、日本勢で2003年大会銅メダルの末続慎吾以来の表彰台はならなかった。金メダルに輝いたラミル・グリエフ(27=トルコ)からは大きく水をあけられ、レース後は「悔しい」を連発。それでも成長の余地を大きく残す内容で、2年後のカタール大会だけでなく、2020年東京五輪に向けて大きな希望が見えた。

 栄光の世界選手権ファイナリストとなったサニブラウンは堂々と200メートルのスタート地点に立った。入場時は笑顔だったが、一気に緊張感がみなぎる。静かに目を閉じ、号砲を待った。

 7レーンからのスタートのリアクションタイムは0・162秒。予選、準決勝よりも早い反応から飛び出し、前半の速さに定評がある隣の8レーンのアミール・ウェブ(26=米国)を追った。コーナーもスムーズに抜け、内の有力選手たちと互角の位置につけて最後のストレートに勝負をかけた。

 だが、そこからストライドが伸びない。もともと違和感があったという右脚に痛みを感じ、顔をゆがめながら懸命に前を追ったが、差を広げられてゴール。最後に何とか一人かわして7着に入ったが、トラックに座り込んだ表情からは悔しさがにじみ出ていた。

「ちょっと気にしていたハム(ハムストリングス=もも裏の筋肉)が最後の100メートルで(痛みが)きて、押せなかったのが悔しい。あそこでもう一段行けていたらメダルに食い込めた。悔しいですね」とレース後は「悔しい」を連発。ファイナリストになった喜びは吹き飛び、勝負になると踏んでいたレースで勝てなかったことを純粋に残念がった。

 とはいえ、絶対王者だったウサイン・ボルト(30=ジャマイカ)が持っていた決勝進出の史上最年少記録を更新したサニブラウンの未来は明るい。極限のスピード争いになる100メートルに比べ、400メートルを本職とする選手も参戦してくる200メートルは総合力が問われる。スタート、コーナリング、最後の爆発力と全てがかみ合わなければ勝利はつかめない。その種目で世界の強豪と同じスタートラインに立った意義は大きい。

「フルに力を発揮できなくて、それでもここに来れているのは大きな自信になる。今後につなげるいい経験ができたと思う」

 2015年の世界ユース選手権で100メートル、200メートルの2冠を制したように、素質は世界が認める一級品。だがまだ体ができておらず、ポテンシャルを生かし切れているとは言いがたい。それでも、2年前の前回大会で痛感していた「前半のスピードの差」は確実に埋める走りを見せた。今年1月からオランダで武者修行していた成果が出た。

 秋からはフロリダ大進学が決まっているため、練習拠点は米国に移る。すでに米国をはじめとするトップ選手たちとも一緒に練習を行っており、強豪選手たちに気後れすることもない。今回は7着という結果に終わったが、経験を積むことで記録はまだまだ伸びる。

 日本陸連の伊東浩司強化委員長(47)がレース後、脚の痛みがあるサニブラウンを400メートルリレーに起用しない方針を示したため、今大会の戦いは終わった。

 だが、ロンドンで確かな爪痕を残した18歳の若武者への期待は高まるばかりだ。

☆男子200メートル決勝
1 ラミル・グリエフ(トルコ)20秒09
2 ウェード・ファンニーケルク(南アフリカ)20秒11
3 ジェリーム・リチャーズ(トリニダード・トバゴ)20秒11
4 サニブラウン・ハキーム(東京陸協)20秒63