東京五輪まで3年…新国立競技場の「新たな火種」

2017年07月16日 11時00分

急ピッチで整備が進めらている新国立競技場(ロイター)

【東スポ2020 現場最前線(4)】3年後の2020年7月24日に東京五輪・パラリンピック競技大会は、開会式(パラリンピックは8月25日)を迎える。東京大会に決まってからというもの、招致裏金疑惑や、エンブレムのパクリ騒動、さらに都知事が2人も交代するなど問題噴出。極め付きは、開会式会場となる新国立競技場の白紙撤回だろう。何とか解決したが、晴れのセレモニーがあわやご破算になるところだった。そこで本紙は“3年前記念”として世間を騒がせた「新国立競技場の今」を取材。すると、“ザハ100億円訴訟”のその後とともに新たな問題も浮き彫りとなった。

 現在、新国立競技場は急ピッチで整備が進められている。全体の工期36か月のうち、6月末時点で地下工事がほぼ終了。8月からはいよいよ地上工事に入り、2019年11月末の完成を目指す。

 大成建設関係者によると「工事は極めて順調に進んでいます。700~800人の作業員がこの仕事に携わる喜びとやりがいを持って作業に当たっていますよ。工事の安全と労働環境に配慮しながら、工期内の完成を目指したい」と語った。

 ここまで来るのには迷走の連続だった。12年、英国の建築家ザハ・ハディド氏の建築会社「ザハ・ハディド アーキテクト」の作品が応募46作品の中から最優秀賞に決定。ところが、当初の総工費1300億円が、試算し直すと3000億円に膨れ上がり、世論は猛反発。結局、15年7月に、安倍晋三首相(62)の「白紙に戻す」との鶴の一声で再コンペを行うことになった。

「ザハ・ハディド氏の会社とは契約を解消しました。再コンペに応募した2案のうち、建築家の隈研吾氏のA案を採用。テーマは『杜のスタジアム』ということで、森と大地を感じさせる木に包まれたスタジアムになります」(五輪関係者)

 怒りが収まらないのがザハ氏だ。未払いの報酬や賠償金、さらに自身のデザインをA案に盗用されたとして、新国立競技場を管轄する日本スポーツ振興センター(JSC)に対し、100億円にも上る巨額賠償請求訴訟を起こそうとした。

 果たしてこの件はどうなったのか。JSC関係者がこう耳打ちする。

「実際は訴えなかったんです。うちがザハ氏の事務所と話し合い、白紙撤回に至った正当な実費17億円ほどを支払って終了。昨年3月にザハ氏もお亡くなりになりましたし、解決しています。大変でしたが、一つひとつ片付けていきました」

 これにて一件落着…と思いきや、今度は別の火種がくすぶり始めた。大会組織委員会の森喜朗会長(79)が、4月に発売した著書「遺書」の中でJSCにかみついたのだ。まずは聖火台をどこに置くか決まっていないことについて「落ちたほうの案にはちゃんと聖火台が付いていたのに、当選したほうには聖火台がない」と批判。

 さらに「木」がテーマなので、大量の木材を使うことについても「聖火台の火が燃え移る危険性がある」と疑問視しているのだ。

「組織委員会は、バカバカしいからこの騒ぎには一切乗らないようにしていました」(以上、同著から)とバッサリ。

 だが、JSC側の言い分は異なる。

 隈氏本人が「もともとコンペの段階から、聖火台は開会式の総合演出が決まってから僕らとすり合わせることになっている」と反論すれば、前出のJSC関係者も「最初から設計に入れる必要はないし、その確認はとっているはず。木が燃える危険性についても、いくらでも対応は可能だし、そもそも演出が決まっていないのに考えようがないではないか。森会長が事実誤認している? それは私の口からは言えません(苦笑)」とのこと。いずれにしろ、両者の風通しが良くないのは間違いなさそう。別のJSC幹部に至っては「組織委員会は決定が遅いから、後から注文つけるようなことがないようにしてほしい。それだけが心配」とクギを刺すほどだった。

 JSCと大会組織委員会は月2回の定期会合を設けている。大会成功のためには、両者のキメ細かい意思疎通が欠かせない。