【フィンランド・ラハティ24日(日本時間25日)発】ノルディックスキー世界選手権ジャンプ女子個人ノーマルヒル(HS100メートル、K点90メートル)で伊藤有希(22=土屋ホーム)が2大会連続銀メダル、W杯個人総合王者の高梨沙羅(20=クラレ)は銅メダルを獲得。ソチ五輪金メダルのカリーナ・フォクト(25=ドイツ)がここ一番の勝負強さを見せて2連覇を達成した。日本は過去最強布陣で臨んだものの、初制覇ならず。来年に迫った平昌五輪に向け、衝撃が走った。

 W杯個人総合1位の高梨、2位の伊藤で挑んだが、世界の頂点に届かなかった。感極まり涙を流したのは今季W杯未勝利のフォクトだった。

 1回目は98メートルの高梨が2位、97メートルの伊藤が4位につける。フォクトは98・5メートルで3位だった。ゲートが下がった2回目、残り4人となり、最初に飛んだのは伊藤。96・5メートルでテレマークも決め、この時点でトップに立つ。しかし、続くフォクトも同じ距離を飛び、わずかにかわされた。

 高梨に期待がかかったが、スタート時に風向きがジャンプに不利な追い風に変わる不運。95メートルと伸びず、この時点で3位に後退する。1回目首位のマーレン・ルンビー(22=ノルウェー)は追い風により91メートルと失速したため、ダブル表彰台が決まったが、ワンツーフィニッシュを狙った日本の構想は意外な“伏兵”に阻まれた形だ。

 本来ならソチ五輪を制したフォクトは高梨と並ぶ優勝候補の一角。ところが本業である警察官の昇進試験の影響により、2年以上もW杯で勝ち星がない。前回世界選手権を勝ったものの、日本からは「他(の選手)が不運で勝っている。今までハッピータイムが2回重なっているだけ」(関係者)と復活を軽視する声も上がっていた。

 しかし、この日のジャンプは絶好調時と全く遜色がなかった。しかも伊藤、高梨とも持てる力のほとんどを出しての敗戦だった。NHK・BSの中継で解説を務めた原田雅彦氏(48)も「1位になった選手を褒めるべき」と拍手を送るしかない。来年の平昌五輪に向けては、4位ルンビーや5位エマ・クリネツ(18=スロベニア)もライバルになるが、フォクトの復活が最大の脅威となることは間違いない。

 伊藤は「ずっと今季は世界選手権を目指してトレーニングしてきたし、メダルを獲得して目標を達成することができてうれしい」と話し、高梨も「前の世界選手権は日の丸を一つしか掲げられなかったけど、今回は2つ掲げられた。有希さんと2位、3位を取ることができてうれしい」と悔しさをこらえ、チームとしての成果に胸を張った。

 この雪辱は1年後。目覚めた怪物に、リベンジするしかない。