必ず攻略する。来年の平昌五輪の行方を占うノルディックスキー・ジャンプ女子のW杯平昌大会2連戦(15、16日)がいよいよ行われる。W杯史上最多の通算「53勝」にあと1勝と迫るエースの高梨沙羅(20=クラレ)は長野の白馬ジャンプ台で最終調整し、決戦の地・韓国へ乗り込んだ。平昌のジャンプ台と共通点が多いとされる白馬のジャンプ台で高梨が確認したこととは何なのか?

 13日、成田空港から平昌に出発した高梨は時折、笑顔を交えるなどリラックスした表情。白馬では10本のジャンプを飛び「自分の調子を整えられたことはよかった。技術的にも精神的にもいい準備ができた」と臨戦モードを強調した。

 欧州でのW杯は途中で切り上げ、スロベニアで行われた直近の2戦を欠場した。2位マーレン・ルンビー(22=ノルウェー)に256点の大差をつけ、2年連続4度目の個人総合優勝に王手をかけている状況とはいえ、異例の調整と言える。ただ、高梨がそこまでして白馬に足を運んだのは確かな理由があった。

 白馬関係者によれば、平昌のジャンプ台は設立こそ新しいものの、助走路の形状から白馬と同じ「旧式の形」に分類される。新しいジャンプ台に比べると、曲線部に大きな違いがあり「白馬は重心の重さが一気にくるジャンプ台。ポイントをつかめれば飛びやすい。蔵王などの新しいジャンプ台は、曲線部が大きいので体に感じる重心は薄くなります」(同関係者)。高梨はこの対照的な感覚を体に刻み込んだ。

 さらには助走路のレールにも共通点があるという。「助走路のメーカーも、平昌は白馬と同じ外国製のものを使っています。だから氷の状態は同じですね」。高梨は2014年秋に平昌でテスト飛行を行っているが、夏用のレールだった。冬用のレールは初めてだけに、白馬を経験したことは大きい。レールの状態は冷却装置によって常に安定しているため、本番と同様の滑りの感覚もつかむことができた。

 ジャンプ台は国やその土地によって形状や角度が異なる。選手にとっては得意、不得意があり、連戦で勝つことは高度な技術が求められる。似たような台で練習することはそれだけ意味があり、山田いずみコーチ(38)も「安心感につながる」と成果を期待した。

“仮想平昌”での予行演習が、高梨のビッグジャンプを後押ししそうだ。