金12個を含む史上最多のメダル41個を日本選手団が獲得したリオデジャネイロ五輪は日本時間22日の閉会式で幕を閉じ、次回2020年の開催都市・東京都の小池百合子知事(64)に五輪旗が手渡された。TOKYOを世界に紹介する8分間の引き継ぎセレモニーで見せ場となったのが、安倍晋三首相(61)のサプライズ出演。「マリオ」に扮した首相の登場に海外メディアやネットユーザーはおおむね好意的だが、次回開催国の首脳が閉会式でパフォーマンスをするのは極めて異例だ。

 和服姿の小池氏が次回開催都市として「重みを感じた」五輪旗を受け取った後、引き継ぎ式「フラッグハンドオーバーセレモニー」では東京の魅力発信が場内のパフォーマンスと映像を通じて繰り広げられた。

 椎名林檎が音楽を監修したアトラクションは、赤く染まったフィールドに白が加わり徐々に変形して日の丸に変わる演出に始まり、やがて渋谷の街中を映す映像へ。地球の反対側にあるリオへ急ぐ安倍首相が、任天堂の大ヒットゲーム「スーパーマリオブラザーズ」のマリオに扮し、ドラえもんが用意した土管を通って、閉会式会場のマラカナン競技場中央の緑色の土管から登場。場内の喝采を浴びた。

 安倍氏は「日本のキャラクターの力を借り、日本のソフトパワーを示したかった」。20年大会の調整委員長を務める国際オリンピック委員会(IOC)のジョン・コーツ副会長は「東京らしい特色を出して素晴らしかった。首相の登場は驚きだった」と印象を語る。

 東京組織委員会会長の森喜朗元首相(79)の発案だという安倍マリオ。日本のネットユーザーからは「気味の悪いものを見せてもらった」「場違いな政治的パフォーマンス」といった批判も寄せられたが、「よくできた作品だ」「いい意味で笑ってしまう」などと概して好意的な反応が見られた。

 リオで銅メダルを獲得したテニスの錦織圭も、海外ネットメディアが掲載したこの場面の画像ツイートを転載。海外のネットユーザーからも「マリオよりもヒトラーに見える」といった感想も書き込まれた一方、米CNNのデジタル・スポーツプロデューサーは「アメージング」と感嘆の言葉をツイートし、英BBCは「次回開催都市は日本のポップカルチャーの象徴を、最大限かつ恥も外聞もなく利用する」と電子版記事で論評した。

 8分間のパフォーマンスを都とともに手掛けた東京五輪組織委員会は、首相出演の意図を「2020年大会に日本を挙げて取り組み、世界の人々に強いメッセージを伝えるためにお願いした」と説明している。

 それにしても一国のトップが貴賓席でなく、五輪閉会式のフィールドに姿を見せるのは異例のことだろう。五輪は国単位でなく都市が招致し、大会組織委員会を構成して運営にあたる。アスリート以外では、開催都市の首長が大会の「顔」となる。五輪旗を受け取ったばかりの小池氏が、マリオ役を演じるのは物理的に難しい。映像も時間をかけて制作したに違いないから、7月末に知事に当選した小池氏のパフォーマンスまで筋書きできなかったのかもしれない。東京五輪は森氏らが「オールジャパン」を強調して開催を勝ち取っただけに、その象徴にふさわしい安倍氏にサプライズ役が委ねられたという解釈もできる。