可夢偉F1残留へ“次の一手”あるのか

2012年11月30日 16時00分

 日本人ただ一人のF1ドライバー・小林可夢偉(26)が苦境に立たされている。小林は3年間所属したザウバーからの放出が決定。今後は他のチームとの契約を目指すが、移籍先が見つからなければF1を去ることになる。いったいどうなるのか。チームへの「持参金」がドライバー選定基準となるF1界特有の事情を踏まえ、モータースポーツジャーナリストの小倉茂徳氏が小林の「次」を探った。

 

 小林は日本GPの3位をはじめ、今季9度の入賞を誇る。6~7人のトップドライバーに次ぐ、堂々の中堅だ。

 

 だがF1界は高コスト態勢が災いし、多くのチームが資金不足に悩む。その結果、トップドライバー以外は資金持ち込みがないとシートを確保できない。小林はこの影響をモロにくらった。

 

 ザウバーは10月31日、来季マクラーレンに移籍するペレス(22)の後任としてヒュルケンベルグ(25)の加入を決めた。さらに23日にはGP2のグティエレス(21)の起用を発表。これで小林の放出が確定した。

 

 小林と同等の戦闘能力を持つヒュルケンベルグは、少ないながら持参金がある。またグティエレスのメーンスポンサーは母国メキシコの大手通信企業「テルメックス」。同社のカルロス・スリム会長(72)は「フォーブス誌」長者番付であのビル・ゲイツ氏(57)を抑え3年連続1位に輝き、その資産額は約5・5兆円に達する。グティエレスら若手の持参金は少なくとも約30億円といわれている。小林はこの“30億円の壁”に完敗した格好だ。

 

 では、小林が移れるチームはあるのか。現時点で空席があるのは「フォース・インディア」。「ケーターハム」「マルシャ」「ロータス」にも空きが出そうだ。

 

 だが「ケーターハム」と「マルシャ」は下位チームで戦闘力も低く、成績不振で評価を下げる可能性が高い。小林も「下位のチームでは乗らない」と明言しており、この2チームは選択肢から消える。

 

 ロータスは元王者ライコネン(33)と契約を延長したが、クラッシュ多発だったグロージャン(26)とは未締結。ただブリエ会長にとってグロージャンは手塩にかけて育てた「子飼い」。しかも母国のフランス石油会社「トタル」による数億円の持参金もある。小林が乗るには最低でも数億円の持参金が必要。小林は募金を始めているが、これは裏を返せばスポンサー集めが進展していない証しでもある。

 

 となるとターゲットはフォース・インディア。ザウバーと競る中堅チームでインドの富豪ビジェイ・マリヤ氏(56)が所有する。しかも来季は5000万ポンド(約66億円)の資金追加を決定、持参金の重要度は他チームに比べ低い。最強パワーのメルセデスエンジンも持っている。

 

 幸い小林のドライバー評価は極めて高い。英専門誌もマクラーレンのペレス移籍について「間違ったほうのドライバーを採った」とのコラムを掲載。とはいえ、この“就活”が厳しいことに変わりはない。ファンの多い小林だけに、資金集めがうまくいくことを願うばかりだ。