6敗の日馬富士に「早期引退説」

2012年11月29日 16時00分

 大相撲九州場所で9勝6敗の新横綱・日馬富士(28=伊勢ヶ浜)に、早くも「来年引退説」がささやかれ始めた。新横綱の5連敗は横綱が番付に載った1890年以来初めてで、10勝未満も1987年九州場所の大乃国以来25年ぶりの不名誉記録。来年1月の初場所でも1桁勝利なら、進退問題に発展しかねない異常事態。直前の2場所連続全勝優勝した時とは別人となってしまったが、その裏側で日馬富士は、周囲が眉をひそめる“問題行動”を起こしていた。

 

 千秋楽取組後の日馬富士は「一生懸命やった結果。もっと体と心を鍛えて頑張っていきたい」とサバサバとした表情で話したが、新横綱に対する周囲の見方は当然厳しい。北の湖理事長(59=元横綱)は「新横綱でも2桁は欲しかった。1桁は横綱の成績じゃない」とバッサリ。初場所でも10勝未満の成績なら、早くも進退問題に発展する可能性が出てきた。

 

 2場所連続で全勝優勝した姿とはまるで別人。横綱昇進を決めたときから不安の声が噴出していたとはいえ、ここまでふがいないとは…。いったい新横綱に何が起きたのか。「初めての横綱で精神的にきつかったのだろう」(北の湖理事長)との指摘がある一方で、今場所の日馬富士はかねて角界内で懸念されていた「朝青龍化」の加速を見せ始めていた。

 

 最初の“異変”は初日(11日)。朝稽古を終えた日馬富士は自ら報道陣を稽古場に招き入れて取材に対応した。その際、新横綱はおもむろにたばこを取り出して火をつけると、スパスパと吸いながら報道陣からの質問に答えたのだ。

 

 日本相撲協会は力士の喫煙を禁じておらず、巡業などでは力士がたばこを吸いながらリラックスした雰囲気で取材に応じるケースもある。ただ、今回は新横綱として注目が集まる本場所の大事な初日。当然、部屋には大勢の報道陣が詰め掛けていた。横綱としての「品格」を問われかねない行動に、ベテラン親方の一人は「考えられない。(横綱として)見られているという自覚があるのか」と眉をひそめていた。

 

 さらに自ら「自分は稽古で強くなったお相撲さん」と公言しながら、中盤戦以降になると朝稽古を休みがちになった。そのうちの何日かは、あろうことか「深酒」が原因だったという。白鵬が本場所中は飲酒を控えて節制に努めているのとは対照的だ。師匠の伊勢ヶ浜親方(52=元横綱旭富士)は「稽古を欠席? 横綱だから自分で調整すればいい」と話したが…。ある部屋持ち親方は「師匠がしっかり指導しなきゃダメだ。勘違いして、どんどん変な方向にいく。朝青龍のときもそうだった」と疑問を投げかけた。

 

 こうした周囲からの批判も勝っているうちは一部に留まっていたはずだが、9勝止まりに終わったことで今後は強まっていくことは確実。実際に、親方衆の間では早くも「引退は早い」「来年のうちに白鵬の一人横綱に戻るんじゃないか」などとささやかれ出している。

 

 待望の新横綱として期待された場所で、まさかの大失態。角界には、希代の名横綱栃錦が昇進時に元横綱栃木山の師匠・春日野親方から「これからは引退のことを考えろ」と告げられたという有名な話がある。日馬富士も引退を考えなくてはならないのか。来年の初場所で、いきなり正念場を迎えることになりそうだ。