競泳背泳ぎの入江陵介(26=イトマン東進)が集大成の五輪に挑む。ロンドン五輪で3個のメダルを獲得したものの、その後は成績が低迷し引退危機にさらされた。失意のエースを救ったのが2013年の東京五輪招致だ。あの歓喜の瞬間が闘争心に再び火をつけたという。リオで再び金メダルを狙う「トビウオジャパン」の背泳ぎエースを直撃――。

 ――ロンドン五輪では100メートルで銅メダル、200メートルで銀メダルだった

 入江:100に関しては最初の種目だったのでメダルを取れた喜びは素直にあったんですけど、200に関しては「次は金メダルだ」という気持ちを持ってやっていたので、2番という成績に悔しさがすごいありました。でも、100%の力を出し切れたので、自分自身は自分のやるべきことをやれたという気持ちになりましたね。

 ――その経験を今度はリオに生かす

 入江:あの時から何かを変えなきゃいけないってものは正直、ないかなと。結局、自分のやるべきことはしっかり練習を積んで、自分の出せるタイムを上げていくことが大事になってくるかなと思っています。

 ――2013年世界選手権後には引退を示唆した。それでも現役を続行したのは

 入江:ロンドンが終わって正直、燃え尽きじゃないですけど、目標を見失う時期が多かった。一番大きかったのは、その世界水泳が終わった後、東京五輪招致に携わらせていただいたことです。

 ――同年9月、ブエノスアイレスで20年東京五輪開催決定の歓喜の瞬間を見届けた

 入江:五輪が決まる瞬間を目の当たりにし、裏でどんなにたくさんの人が動いているかっていうのもテレビでは映らない部分で知りました。必死になって五輪を呼んでいただいているのに、その五輪に出るチャンスがある自分がこう簡単に手放すなんてもったいないというか、申し訳ないと思いました。

 ――それ以来、辞めたい気持ちは

 入江:なかったですね。それこそ昨年のシーズンも全然良くなかったですけど、そういった気持ちも全然出てこなかったです。

 ――昨年から体重を3キロ増やした

 入江:大変だったんですけど、今は普通にキープできるようになりました。3食しっかり食べていつもよりプラスアルファ多めに食べるっていうのをやってましたね。吐くまではいかないんですけど、おなかいっぱいになってからまたちょっと頑張って入れるっていう感じでやってました。

 ――精神的にも、マンツーマンで指導する道浦健寿コーチ(61)が「弱音を吐かなくなった」と目を細めている

 入江:自然にそうなっていたらうれしいですね。4年前と比べ、年齢的にも上がってます。ロンドンの時はどちらかというと若いほうだったので、立場的なものも「しっかりしていかなきゃいけないな」っていう気持ちはありますね。

 ――金メダルを取るために必要なことは

 入江:自分のいい時のレースを振り返ると、自分に集中して、自分の泳ぎがかみ合ってるなっていうふうに泳げている。200、100メートルともに100%、自分の泳ぎで泳ぎ切ることが大事だと思います。

 ――相手を見るより、自分との闘いか

 入江:今、世界ランキング的に相手どうこうと考えられないタイムではある。そこはある意味、良かったかなというふうに切り替えています。人と競うんじゃなくて、自分でしっかりいいタイムで泳ぐことに集中してやりたいと思います。

 ☆いりえ・りょうすけ 1990年1月24日生まれ。大阪市出身。0歳から水泳を始め、中学で背泳ぎ専門となる。2008年北京五輪に出場。12年ロンドン五輪では銀メダル2(200メートル背泳ぎ、400メートルメドレーリレー)、銅メダル1(100メートル背泳ぎ)を獲得。今年4月の日本選手権200メートル背泳ぎでは史上初の10連覇を達成した。178センチ。