麻雀は大先輩との交流の場

2012年11月13日 16時00分

【山本功児 なんとなく幸せ(12)】

 

 巨人では良き先輩たちに恵まれた。王貞治さんはじめ、張本勲さん、柴田勲さん…。名前を挙げたらキリがないほどで、本当によくかわいがっていただいた。

 入団1年目のオープン戦だっただろうか。遠征先の旅館に到着するや、王さんと柴田さんに現DeNA監督の中畑清とともに呼ばれ「おい、マージャンするぞ!」。2人とも嫌いではないので、二つ返事でOK。大先輩2人と卓を囲み「ポン」やら「チー」と勝負に打ち込んだ。

 実はこの時、選手より遅れて荷物が到着したのだが、ボクもキヨシも勝負の真っ最中。あとから「荷物の仕分けは新人選手の仕事だろ!」とコーチに大目玉を食らったのだが、そんなしきたりも怒られて初めて知ったほどだった。

 プロ1年目の遠征では張本さんと同部屋になることが多かったのだが、本当に優しい先輩で、よく食事にも連れて行ってもらったし、宿舎でも後輩のボクが余計な気を使わないよう配慮していただいた。張本さんはたばこを吸わない人だったが「気にしないで吸っていいよ」。当時のボクはたばこを吸っていたので、部屋でも遠慮することなく、スパスパさせていただいた。

 これは笑い話だが、ある遠征でボクではなく、投手でのちに長嶋監督の専属広報となる小俣進が張本さんと同部屋になったことがあった。彼には初めてのことで「張本さん、どう?」とボクに探りを入れてきたのだ。

 答えはもちろん「本当にいい先輩だよ。逆にこっちが気を使っていただいたほどだった」。ボクのアドバイスにウソや偽りはなく、ついでにたばこに関しても「『遠慮なく吸っていいよ』って言われた」とも付け加えた。

 その翌日、小俣が目をつり上げて「全然違うじゃないか!」と文句を言ってきた。聞けば、部屋でたばこを吸っていると、張本さんに「外で吸え!」と怒鳴られたというのだ。言うまでもなく、ボクが小俣をハメたわけではない。たまたま張本さんの虫の居所が悪かったのか、はたまたボクの時だけたばこの煙を我慢してくれていたのか…。真相は分からない。

 当時は今と違って先輩との相部屋が当たり前だったし、娯楽も少ない時代だった。外へ食事や飲みに出かけるのでなければ、やることといえばマージャンぐらい。明け方までたばこをスパスパしながら牌をジャラジャラすることがアスリートにとっていいこととは言わないが、先輩との大事なコミュニケーションの場ではあったし、相互理解を深める絶好の機会だったことは間違いない。

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