キヨシは100%信用できる男

2012年11月10日 16時00分

【山本功児 なんとなく幸せ(11)】

 

 入団1年目のキャンプから一軍昇格も宿舎の部屋も一緒だったボクと中畑清は、シーズン中も新幹線の座席も常に隣同士になるなど、なにかと行動を共にしていた。
 友達だからというわけではないが、キヨシほどのナイスガイを見たことがない。現巨人監督の原辰徳が三塁へ回り、自身がボクの守備位置である一塁にコンバートされた時も、たいそう気にかけていた。さすがにこの時は「誰を使うか決めるのは監督だ。仕事ではオレに気を使うな」とたしなめたが、そういう男なのである。

 さすがに苦戦を強いられているが、DeNAの選手は幸せだと思う。ボクも“いい監督”はたくさん見てきたが、あれだけ真面目で正直な人間も珍しい。成功も失敗も裏表なく話すし、付き合った人間はみんな彼のことを好きになっている。100%信用して大丈夫だと断言してもいい。

 若い選手がどう見ているか分からないが、数々の修羅場をくぐってきたベテランの中村紀洋やラミレスは分かっているのだと思う。キヨシの良さを、何事にも前向きで一生懸命な姿勢を。

 生え抜きのエースである三浦大輔や、ここ数年は出場機会の減っていた金城龍彦もそうだが、彼らが意気に感じてプレーする様子は、テレビで見ていても伝わってくる。ボクにも経験はあるが、若手を育てながら勝つというのは並大抵のことではない。ただ、DeNAは前身の横浜時代に4年連続で最下位だったチーム。上に上がるしかないのだから、やりがいはあるはずだ。

 これまでにも時代を席巻した野球スタイルがいくつかあった。1978年にヤクルトを初の日本一に導き、80年代には西武をリーグ優勝3回、日本一2回の常勝チームに育てあげた広岡達朗さんの「管理野球」。データを重視し、90年代にヤクルトを4度のリーグ優勝と3度の日本一に導いて一時代を築いた野村克也さんの「ID野球」。

 休み前に徹夜でマージャンしたり、飲みに行っては声がかれるまでカラオケに興じるキヨシは、これまでの名将とはまるでタイプも違うが、今までにない監督像をつくり上げてくれるのではないかと期待している。

 今でもキヨシとは友達付き合いをさせてもらっているが、実のところ、彼が球団とどんな契約を結んだのか聞いたことがない。結果がすべての世界なので先のことは分からないが、少なくともキヨシは自ら投げ出すような男ではない。苦労は絶えないだろうが、なんとか監督としても大輪の花を咲かせてほしいものである。

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