カーリング女子世界選手権(カナダ・スウィフトカレント)で日本勢初の銀メダルに輝いた日本代表のLS北見が29日、帰国した。2018年平昌五輪出場へ大前進し、メダル獲得の期待も膨らむ結果となったが、日本協会は慎重な姿勢を崩さない。突如として現れた“魔法のブラシ”が勢力図を一変させる可能性があるという。

 カーリング史上初の快挙に成田空港は凱旋ムード一色となった。大勢のファンと花束で出迎えられたスキップの藤沢五月(24)は試合で叫び過ぎたため、かすれ声。それでもチームコンセプトの笑顔を絶やさず「『これが日本のカーリングなんだ』ということを見せられた」と胸を張った。

 ただ、これで平昌五輪に出場が決まったわけではなく、メンバーも気を緩めることはない。国別出場枠獲得は有力になったが、国内の代表争いは来季の日本選手権がヤマだ。さらに若いチームとあって、設立メンバーの本橋麻里(29)も「選手はオリンピックって見てないと思う。地に足がついた選手たちなので」と手放しで喜ばなかった。

 浮かれていないのは日本協会も同じだ。特に懸念しているのが、昨年カナダで開発された新型ブラシの存在。馬の毛などで作られ「こすると(ストーンが)普通の氷の曲がり方と違う曲がり方をするようになる」(浪岡正行専務理事)という新兵器は動画サイトでも話題騒然となり、世界選手権実行委員会の判断で今大会は使用が規制された。

 だが、今後の展開によっては“解禁”される可能性があるという。「『禁止』と言ったら『技術革新を侵害する』と訴えられる。だから、先延ばしになった。きっと違うのを出してくるでしょうね。きちっと情報をつかんでいかないといけない」(同)

 かつて競泳でも高速水着が導入され、世界記録の乱発を招く事態となったが、カーリング界も同様の問題に直面している。世界選手権で道具に関する規制が敷かれたのは初めて。「今までは自分で作ったブラシでも出れた」と言われるほど“平穏”だっただけに衝撃は大きい。

 世界2位になったとはいえ、道具が一新されてしまえば実績は関係なくなる。この点を最も憂慮しているのだ。

 今回、LS北見はこの新型ブラシが使用されることも想定し「それだけは不利にならないようにいろんなテストをして」(藤沢)対策を整えた。平昌五輪で“リベンジ”するためには、国内外のライバルとの争いはもちろん、道具やルールをめぐる情報戦にも打ち勝つ必要がある。快挙達成といっても選手たちの心が休まることはない。