なでしこ佐々木監督一転続投の裏

2012年10月30日 16時00分

 銀メダルを獲得したロンドン五輪から2か月、なでしこジャパンが大きく揺れている。日本サッカー協会は9月末で既に任期満了となった佐々木則夫氏(54)となでしこ監督続投に向けた交渉を行い、大筋合意したとされる。五輪前から協会上層部がもくろんでいた女性新監督誕生という方針が“撤回”され、なぜ「ノリオ続投」となったのか。混沌とする舞台裏に迫った。

 

 2007年12月になでしこジャパンの監督に就任した佐々木氏は、昨年はドイツ女子W杯優勝、今年はロンドン五輪銀メダルという輝かしい成績を残した。それでも五輪前から協会上層部は15年カナダ女子W杯に、「佐々木続投」ではなく新体制で臨む意向だった。

 

 さらに協会上層部は、新監督を女性指揮官とする方針を立てた。U―20女子代表(ヤングなでしこ)のコーチを務めていた本田美登里氏(47)を筆頭候補とし、非公式ながら就任への打診も行っていた。本田氏も当初は前向きに検討したといわれている。

 

 ところが、女子サッカー人気の盛り上がりが思わぬ事態を招いた。なでしこリーグ関係者は内情をこう明かした。

 

「本田氏が『まだ(監督は)できない』と腰を引いてしまった。慌てた協会は他の女性指導者にも話を振ったが、断られた。佐々木氏の次のなでしこ監督なんて“貧乏くじ”みたいなもの。すごい注目度だし、成功して当たり前。失敗したら叩かれる。誰だってやりたがらないし、女性は特に敏感だから仕方ないよ」

 

 さらには、上田栄治女子委員長(58)が後任に考えていたU―20女子代表の吉田弘監督(54)の昇格案が難航。日本サッカー協会の大仁邦弥会長(68)が19年女子W杯の日本招致を表明したことも、佐々木氏続投への追い風となった。

 

「19年はラグビーW杯が日本で開催されるから、女子W杯招致はないはずだった。ところが、大仁会長がなでしこの盛り上がりを見て招致に意欲を見せ始めた。こうなると次のカナダ女子W杯は『自国W杯準備大会』の意味合いとなる。本来なら次のW杯はロンドンまでのチームをリセットして世代交代も進めたいところだったが、中途半端な編成では臨めなくなった」(協会関係者)

 

 難しいかじ取りを求められた上田委員長は佐々木氏への続投要請を決断。人気と知名度、何より実績があり「勝てる監督」という条件では佐々木氏しかいなかったのだ。

 

 ある協会幹部も「まだ金銭を含めた待遇面で隔たりがあり、完全な合意には時間がかかるかもしれない」と100%合意には至っていないことを示唆。簡単に一件落着とはいきそうになく、名将の続投は波乱含みだ。