森発言の“逆”と出た——。2020年東京五輪・パラリンピックで主会場となる新国立競技場の建設計画を再検討する関係閣僚会議(議長・遠藤利明五輪担当相)は22日、公募に寄せられた2案の中からA案を採用することを決めた。7月に当初計画が白紙撤回されたことを受けて行われてきた新国立整備計画の見直し。2案をめぐっては大会組織委員会の森喜朗会長(78=元首相)がB案に好意的なコメントをして注目されたが、選ばれたのはA案だった。

 A、Bの両案は事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)に設けられた専門家による技術審査委員会が審査。14日に一般公開されていた。技術審査委はそれぞれを採点し、JSCが政府に対し「新国立『A案』報告へ」と一部メディアが22日に報じた。

 A案は「木と緑のスタジアム」をうたい、屋根に木材を取り入れる。大成建設と「和の大家」として知られる建築家・隈研吾氏(61)らが組んで応募。敗れたB案は「自然に開かれた日本らしいスタジアム」などをセールスポイントに掲げた。竹中工務店、清水建設、大林組と「建築界のノーベル賞」と言われるプリツカーの受賞者である伊東豊雄氏(74)らによる計画とみられる。

 14日の両案公表後、森氏はメディアの取材に対し、「スポーツという雰囲気が出ている」などとB案に好意的な反応を示す一方、A案には「明るさがない」と発言していた。これがまたネットなどでは「それならA案が選ばれるのでは」と臆測を呼んで関心を集め、まさにその通りの結果となった。

 安倍晋三首相(61)が7月17日、プリツカー賞受賞者の女性建築家ザハ・ハディド氏(65)の当初計画案を白紙撤回してから5か月余り。A案スタジアムは来年2月、すでに更地となった旧競技場の敷地で工事が始まる。完成は19年11月末の予定。工費はザハ案が選ばれた当時の約1300億円を上回る約1490億円。ザハ案で見積もりが膨れ上がった当時に了承された約2500億円は大きく下回る。