2020年の東京五輪のエンブレムに盗作疑惑が持ち上がっている問題は、デザイナーが会見しても批判がやむ気配がない。5日、佐野研二郎氏(43)は「まったく似ていない」と盗作を否定したが、ネットは大荒れ。「まったく似てなきゃ騒ぎになってない」「見た目で一緒なんだから変えろ」などとバッシングばかり。説明しても理解されないならどうすりゃよかったのか。本紙で過去に“STAP論文騒動”の小保方晴子氏(31)など著名人の会見を分析してきたコラムニスト、石原壮一郎氏(52)がぶった斬る。

 佐野氏は会見の冒頭、「盗用ではないかとの指摘に大変驚きました。事実無根です」とパクリを否定した。その後も「私のキャリアの集大成」「真にオリジナルのものができたから世に出せた」と激白。盗作が指摘されたベルギーのオリビエ・ドビ氏がデザインしたリエージュ劇場のロゴについては、「デザインに対する考え方が違うので、まったく似てないと思った」ときっぱり。

 エンブレムのデザインコンペに際し、五輪組織委員会は2つの課題を出した。それは五輪とパラリンピックのエンブレムが関連していることと、グッズや映像への展開力があること。

 会見では「東京」などを意味する「T」をイメージしたエンブレムが別のアルファベットに形を変え、文字を作る映像を公開し、展開力をアピール。ベルギーの劇場ロゴとは根本的に発想が異なることを強調した。

 国民に向かって佐野氏がプレゼンテーションをしたわけだが、火に油を注いだがごとく、ネットで批判は高まるばかり。

「まったく似てないって言ってるから擁護できない」「雲隠れして言い訳を考えてたんでしょ」などと、特に「まったく似てない」発言が叩かれている。

 一体、どうすればよかったのか。石原氏はエンブレム問題をペンギンにたとえる。

「われわれ素人は見慣れないものの区別はつきません。水族館に行ってペンギンを見に行ったとします。2匹のペンギンがとても似ていた。しかし飼育員から見れば、『とんでもない。こっちの方がイケメン。あっちのブサイクと同じにするな』と、ペンギンの見分けがつく。これがプロの矜持じゃないですか」

 エンブレムとベルギーのロゴが似ているように見えても、デザインの専門家から見れば大きな違いがあるのだという。

「『似てない』と言い切ったのはよかった。『似てますね』なんて言ったら、安倍晋三首相が安保法制について『理解が進んでいないのも事実』と言ったのと同じで、ならやめなさいよ、となっていたでしょう。作り直したら盗用を認めたことになってしまいますしね」(石原氏)

 むしろ、ベルギーのドビ氏に失策があったと分析する。

「もし『似ていて光栄だ』と発言していたら、佐野氏はこうして反論もできなかったでしょう。盗作疑惑だけが残って、ドビ氏の株は上がる。こうした大人のしたたかさも大事です」(同)

 ガチンコで争えば、決着がついてしまい、商標登録していないドビ氏は分が悪い。すでにドビ氏の売名疑惑まで口にする人がいる状況だ。

 批判の中心はネット。

「私は実生活でこの騒動を話題にしている人を知りません。騒いでいるのは主にネットなんです。ネットにはかみつきたいだけの人が多い。だからネットのバッシングなんて気にしないのが大人力のある態度です」(石原氏)

 いちいち気にしていたら何も進まないというわけだ。

 組織委としては、ベルギーのロゴが商標登録されていないことから、商標については解決済みとの認識。著作権についても、「佐野氏の作品は五輪とパラリンピックの連動性がある。動画などへの展開力もある。オリジナルの趣向に基づいている」(槙英俊マーケティング局長)と問題なしと考えている。慎重派だった舛添要一都知事(66)も「コンセプトを含めて、まったく違うと明確に説明していて、非常に説得力がある」と高評価に転じた。

 盗作騒ぎはネットの枠を超えて各メディアに拡大。「突っぱねてもいいのに会見で説明したのは勇気のある大人です。願わくば、この件がこれからの五輪の行く末を決めることにならなきゃいいんですが」と石原氏は騒動の終結を願った。