トランポリン女子東京五輪代表で元世界女王の森ひかる(22=TOKIOインカラミ)の背中を押したのは、あの選手の存在が大きかったようだ。

 まさかの予選敗退に終わった東京五輪から約9か月。一時は現役引退も考えていたというが、2月下旬に現役続行を決断。9日には都内で会見を行い、新たな所属が「TOKIOインカラミ」になったと発表し「トランポリンを通して、もっと成長していきたい」と意気込みを示した。

 昨年11月の世界選手権後は、人生初のアルバイトに挑戦。一度トランポリンから離れることで、競技への思いが再熱した一方で「トランポリンって過酷ですごく難しい。だからこそ、競技を続けることをなかなか決意できなかった」と、あと一歩を踏み出すことができなかった。

 そんな時、目に飛び込んできたのが北京五輪で懸命に戦うスキージャンプ女子の高梨沙羅(25=クラレ)の姿だった。メダルが期待された混合団体は、自身のスーツ規定違反が判明して失格となり、大粒の涙を流した。期待に応えられなかった高梨の気持ちを、森も東京五輪で味わった。

「本人にとってはすごく残念だけど、周りの人たちから見るとそういう姿からもすごくパワーがもらえた」

 結果に関係なく、頑張る人の姿は心を打つものがある。「もしかしたら私の姿を見てパワーをもらってくれた方もいるのでは。東京五輪でダメだったけど、立ち上がっていく姿を通じて、少しでもみなさんの心を動かしていけたら」と覚悟を決めた。

 東京五輪では女子個人優勝の朱雪瑩(中国)から金メダルをかけてもらい「すごくカッコよくて、私もこれ欲しいと思った」と刺激を受けた。パリ五輪では自らの手で金メダルをつかみ取る。