日本オリンピック委員会(IOC)の山下泰裕会長(64)が、2030年札幌五輪招致に向けて〝支持率アップ〟を模索している。

 29日の会見では、先日出席した札幌五輪の50周年記念行事で「改めて札幌市民の五輪の関心の高さを実感した」と語った。

 ただ、札幌市が市民に実施した意向調査で「半数を超える賛意を示してもらったのと同時に4割弱の方が反対を意思表示されている」と指摘。そうした〝反対派〟に対しては「懸念点をできるだけ丁寧に説明し、理解促進を図ることが必要。特に大会招致のプロセスが変わった、IOC(国際オリンピック委員会)の考え方が以前と大きく変わっていることが十分に伝わっていないと感じている」との見解を述べた。

 山下会長は「五輪は地域、国、年齢、言葉や文化の壁を越えた相互理解を深める場になっている。アスリートのみならず、国民全体が交流に参加する機会を持つことができる」と開催の意義を強調する。

 昨夏の東京五輪・パラリンピックは「コロナ禍で極めて限定的だった」としながらも「ボランティアの経験談は非常にポジティブだったと考えている。ぜひ30年の大会開催を実現し、より多くの人に体験してもらいたい」と熱望している。

 しかし、大会に関する費用面などから反対意見を持つ人も少なくない。そこで山下会長は既存施設の有効活用を掲げ「街づくりのために計画されているものを建設するのはいいが、五輪のためだけに新たに建設するのは好ましくないということ」と話す。

 続けて「費用の心配は当然」と理解を示し、東京、16年リオデジャネイロ、12年ロンドンを引き合いに「(これらの大会は)当初の予算から実際に開催した時に3倍、4倍近くになっている。ただし、当時とは開催都市決定のプロセスが大きく異なっている。国の威信をかけて豪華にお金をかけてということではない。できるだけ簡素化させていく。IOCの方針も大きく変わった。そういう説明をすれば納得してもらえるのではないか」と自信をのぞかせた。

「JOCとしては札幌市や北海道はもちろん、五輪を日本全体が前向きに変換する機会ととらえてさまざまな議論を行っていきたい」と山下会長。今後〝賛成派〟の比率をどこまで伸ばせるか注目だ。