〝体質改善〟の一手とは――。アーチェリー男子個人で五輪2大会メダリストの山本博(59=日体大教)が、ロシア・スポーツ界の在り方について提言した。

 ロシアの侵攻を受けたウクライナはアーチェリー強豪国の一つで、山本は「多くの親友がいて、ニュースを見ると関わった人たちがいるんだろうなと。できることなら助けてあげたいですけど、今は連絡も取ることができず、どうすることもできません」と率直な思いを明かした。

 その一方でロシアにも「一緒に戦った選手がいます」とした上で「(彼らの中には)侵攻を正当化していない人もいると思いますが、残念なことに政府に反抗することは不可能でしょう。それは(競技関係者が)補助金をもらっているからです。政府の方針に文句を言う人に補助金は出しませんよね」と分析する。

 ロシアへの制裁はスポーツ界に広がっており、先月28日に国際オリンピック委員会(IOC)が各競技の国際連盟にロシア選手、役員を国際大会に出場させないように勧告。また、国際サッカー連盟(FIFA)と欧州サッカー連盟(UEFA)もロシアチームの国際大会出場を禁止した。

 この措置について、山本は「本来はそんなことしてほしいとは思いません」と言う。しかし、ロシア国民に対し「(世界が)なぜ出場禁止や開催中止にするほど怒っているのか、政府は自らを正義だと言っているのに、なぜ責められるのか疑問を持ってもらうためにはベストではないですが、ベターではないでしょうか」と指摘した。

 さらに「スポーツが政治に利用されることは仕方ないことで、こういった形で反抗するのが唯一の方法です」と付け加えた。

 そんなロシアはかねてドーピング使用も深刻な問題になっており、昨夏の東京五輪、北京五輪は国旗や国歌を使用せず、ロシアオリンピック委員会(ROC)として出場。特に北京五輪はフィギュアスケート女子のカミラ・ワリエワに違反が判明しながらも出場が認められ、物議を醸した。

 こうした〝体質〟は改善するのか。山本は「プーチン政権が続く限り厳しいでしょう。彼の許可で強化費が出たり、(関係者の)生活を面倒見ているとすればコーチ陣もいい顔して、いいことを報告したいと考えるでしょう」。その抑止力となる可能性があるのが、国際オリンピック委員会(IOC)だという。

「IOCが一度、五輪出場禁止を言い渡したほうがいいのではないでしょうか。国旗を使用せずROCとして出場しても結局、帰国すれば『ロシアが勝った』ことになり、国威発揚に利用されますからね」と最終手段として〝五輪出禁〟を提言した。

 もちろん「頑張っていることに関しては一緒ですので、国旗を背負って戦うことは経験させてあげたい」との願いはあるが、ロシアの〝取り扱い〟はどうなるのか…。