東京五輪「地震問題」浮上 首都圏は震度4でも混乱

2015年06月02日 10時00分

 5月30日夜に小笠原諸島と神奈川県で震度5強を観測した地震は、各地で活発化する火山活動とあいまって人々の不安を呼んだ。発生メカニズムは東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)や予想される南海トラフ地震とは異なり、津波も発生しなかったが、首都圏の高層ビルのエレベーターや鉄道がストップするなど大きな影響が出た。新国立競技場の建設費を巡ってもめる国と東京都にとっては、東京五輪に向けたさらなる課題が改めて浮き彫りになった形だ。

 同30日夜に小笠原諸島西方沖で発生した地震は当初、地震の規模を表すマグニチュード(M)は8・5と発表されたが、翌31日に8・1に、震源の深さも約590キロから約682キロに修正された。

 太平洋プレートの内部で発生した今回の地震は、太平洋プレートと北米プレートの境界面で発生した東北地方太平洋沖地震やフィリピン海プレートとユーラシアプレートの境界面で発生する南海トラフなどとは起こり方が異なる。

 首都圏は震源地から離れていたが、気象庁によると、プレート内部を揺れが伝わりやすかったため、大きな揺れを観測した。過去の例から余震もないという。

 今回の地震では転倒などでケガをした人はいたが、5月31日時点で死者は出ていない。最悪の事態を免れたことは幸いだったが、首都圏の都市機能においては混乱が生じた。

 在来線はほぼすべての路線が一時的に運休。JR山手線は約3時間、京浜東北線は約5時間運転が見合わせられ、公共交通手段では自宅にたどりつけない人も多かった。

 また、都心では多くの高層ビルでエレベーターがストップ。六本木ヒルズの52階には2時間以上取り残される人がいた。同様の被害は東京スカイツリーや横浜のランドマークタワーでも生じた。

 この事態を憂慮するのはある政府関係者だ。

「東日本大震災の時は都内の震度も最大5強だったから街中大混乱になった。ただ、震度4でもここまで混乱が起きるというのは、五輪対応を検討するうえで大きな課題になる」

 5月30日の地震は神奈川県西部で震度5強、埼玉県春日部市などで震度5弱を観測したものの、千代田区など都心の広い地域は震度4だった。

 文部科学省の地震調査研究推進本部は30年以内にM7程度の首都直下型地震が発生する確率を70%程度と予測している。直下型大地震はいつ起こってもおかしくない状態だが、大規模でなくても地震が発生すれば、混乱が生じる余地はある。

 また、地震学専門家の木村政昭・琉球大学名誉教授は「日本海溝から西の伊豆諸島沖はM8・5ぐらいの地震が発生する可能性はある。首都圏まで、津波がいくかもしれない」と指摘。五輪・パラリンピックが行われる湾岸部で津波被害が生じ、交通などがまひすればパニックは免れない。

「五輪対応については施設の耐震化はもちろん、避難誘導ボランティアの整備やわかりやすい避難経路の掲示などを検討はしている。だが、地震で会場からホテルに帰れなくなった人が大量発生した場合やホテルで地震にあってパニックに陥る人が出る可能性も考慮しなければいけない」(前出の政府関係者)

 日本人は“地震慣れ”しているが、五輪では全く地震が発生しない地域からも多くの人がやってくる。

「とくにパラリンピックにおいては世界中からハンディキャップを持った選手や関係者が集まる。海外からの来訪者に対しては、地震のリスクがあること自体をもっと周知する必要があるかもしれない。新国立競技場問題も混迷を極めているが、解決しなければいけない課題はここへ来てどんどん出てくる」(同)

 このタイミングで解決すべき課題を再確認できたことを前向きに捉えるしかない。