北京五輪男子スケルトンに出場したウクライナ選手による「NO WAR(戦争反対)」のパフォーマンスについて、国際オリンピック委員会(IOC)が14日、定例会見で見解を示した。

 問題のシーンは11日に行われたスケルトン男子の競技開催中。ロシア軍事侵攻の懸念により緊張状態が続くウクライナ代表のウラジスラフ・ヘラスケビッチは3回目の滑走後、中継用のテレビカメラに「NO WAR IN UKRAINE(ウクライナに戦争はいらない)」と記した紙を掲げた。

 五輪憲章第50条では「オリンピックの用地、競技会場、またはその他の区域では、いかなる種類のデモンストレーションも、あるいは政治的、宗教的、人種的プロパガンダも許可されない」とうたわれており、ヘラスケビッチの行為は同ルールに抵触する可能性もある。

 この件についてIOCのクリストフ・デュビ五輪統括部長は「〝NO WAR〟というメッセージは皆が共感できるもの。戦争で苦しんでいる人たちにとって重要だと思う。とても人間的なメッセージだと思う」と所感を述べた。さらに「もし五輪で平和を実現できれば素晴らしい。アスリートが選手村で手を握り合い、お互いを尊重して受け入れられれば、それこそが五輪における和平のシンボルだ」と話した。

 一方、マーク・アダムス広報部長は「フィールドプレーもしくは表彰式は、そのようなステートメントを出す場ではない。政治的にはニュートラルでなければいけません」と念を押した。ヘラスケビッチに対しては競技前にルールを説明したことを明かし「そのことを彼は理解をしていた」と話した。

 五輪競技施設内での政治的パフォーマンスを巡っては、かねて議論の対象になってきた。昨夏の東京大会では女子サッカーの英国対チリの試合前、両チームの選手が人種差別に対する抗議の意志を示す〝片ヒザ付き〟のポーズを取り、陸上女子砲丸投げ銀メダルのレーベン・ソーンダーズ(米国)は表彰台で両手を頭上で交差させ、黒人や性的マイノリティーに対する偏見に反旗を翻していた。