五輪取材で無敵だった「トウキョウ・スポーツ」あのIOCバッハ会長も本紙報道を注視…

2021年11月14日 07時00分

IOCのバッハ会長(ロイター)
IOCのバッハ会長(ロイター)

【取材の裏側 現場ノート】東スポの名刺を渡すと、大抵は「UFOとカッパの新聞ですね」「日付以外はウソでしょ?」と言われる。最近は「餃子も売っていますね」という定番リアクションも加わった。改めて社名ひとつで笑いが取れる環境に感謝する日々だ。 

 とはいえ、東スポの看板がマイナスに働くことも多々ある。お堅い系の取材対象者には名刺交換であからさまに嫌な顔をされ、相手にされないこともしばしば。珍しく取材に応じてくれたと思ったら「東京新聞」と勘違いしていた…というオチもあった。ちなみに「東京新聞」「テレビ東京」を系列会社と勘違いされることが多いが、資本関係はない。

 野球記者だった20代の頃は「東スポ」にこだわりすぎて自分の首を絞めた。囲み取材では無理に型破りな質問をぶち込み、何とか爪痕を残そうと空回り。選手との親睦会では名前を顔を覚えてもらうため、わざと破天荒な行動を取ったが、すべて裏目に出た。ある時、見かねた元ロッテの小宮山悟氏(現早大野球部監督)が駐車場で記者に声をかけてくれた。「キミは無理しているね。最初から質問を曲げるから不自然になる。まずは野球をしっかり勉強し、ストレートな質問を磨いた方がいい」。15年前の話だが、この言葉は今も記者としての礎になっている。自分から「東スポ的」であろうとする必要はない。まずは人と真っすぐ接し、誠意をもって正直に知りたいことを聞く。それで結果的に笑える記事になれば儲けもの、と考えるようになった。

 今年夏、入社以来初めて「東スポ」の社名が神懸かった。東京五輪の取材現場で、海外関係者に名刺を渡して「トウキョウ・スポーツ・プレス」と言うと、100%信用してくれた。なにせ「東京」で開催する「スポーツ」の祭典だ。恐らく「ワシントンポスト」や「ニューヨークタイムズ」にような新聞と思ったのだろう。とにかく「トウキョウ・スポーツ」は無敵だった。国際オリンピック委員会(IOC)の関係者から聞いたが、あのIOCトーマス・バッハ会長も東スポ報道を注視していたという。おかげで開催中は多数の海外情報を得ることができた。ただ、最後まで相手に紙面を渡すことができなかった。正体がバレるのが怖くて…。

(五輪担当・江川佳孝)

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