スキー・ジャンプ女子の高梨沙羅(18=クラレ)が11日、W杯最終戦(13日、ノルウェー・オスロ)に向け、成田空港を出発した。

 個人総合3連覇を狙うが、首位のダニエラ・イラシュコ(31=オーストリア)を89ポイント差で追う厳しい展開。逆転には自身の優勝に加え、イラシュコが20位以下になることが条件だ。さらに調子も上がり切らない。先の宮様大会国際競技会(札幌)では世界選手権銀メダルの伊藤有希(20=土屋ホーム)に連敗。それでも「最後は楽しく飛びたいと思います」と前向きで、有終の大ジャンプを誓った。

 クヨクヨしていられない理由がある。4歳上の兄でジャンプ選手の寛大(22=明治大)が今季限りで引退。21日の伊藤杯シーズンファイナル大倉山ナイタージャンプ大会が最後の試合となる。

 同大会は例年、W杯と日程が重なるため高梨は出場していなかった。しかし、今年はW杯の日程が繰り上がり、高梨もエントリーしている。もちろん、兄の花道を盛り上げることが目的だ。「子供のころから一緒にやってきてますからね。(伊藤杯を)ずっと気にしていました」(関係者)。高梨は小学校2年の時、兄の影響でジャンプを始めた。昨年も海外に兄妹で合宿に行くなど、その絆は誰よりも深い。

 高梨が出場すれば観客動員も伸び、最高の“引退式”を迎えられる。W杯最終戦で優勝すればさらにハクがつく。高梨は熱い思いを胸に秘め“聖地”ホルメンコーレンのスタート台に立つ。