体操の世界選手権(北九州市立総合体育館)が熱戦を繰り広げているが、中継局のテレビ朝日に対して「またか…」と失望の声が漏れている。

 今大会、男女予選(18、19日)は地上波中継がない代わりに、テレビ朝日が出資するネット放送局「Abema」で生中継。しかし、男女個人総合と種目別の決勝(20~23日)はライブ中継がなく、テレビ朝日は30分~2時間遅れの〝ディレイ放送〟を行った。見ている側は一瞬「生中継なのか?」と錯覚するような作りだが、画面に「LIVE」の表示はない。連日のようにSNSでは「自国開催なのに、なぜ生中継しないのか?」「リアタイじゃないスポーツ大会は価値ナシ」と厳しい意見が続出した。

 批判の理由は〝ネタバレ〟だ。今大会は有観客で行われ、結果をいち早くSNSでつぶやく観客もいる。各メディアも結果速報を流すため「ドキドキして見ているのに、ネットで結果が分かっちゃう」と嘆くファンは少なくない。また、日本の新エース・橋本大輝が銀メダルを獲得した男子個人総合決勝では「あん馬」の放送中に「落下注意!」のテロップ。実はこの時、すでに橋本はあん馬から落下した直後で、図らずも落下を〝予告〟する形となってしまった。

 近年、この手の録画放送はフィギュアスケートでも主流だ。海外大会の場合は日本時間の早朝~昼間に行われた競技をゴールデンタイム(午後7~10時)に録画放送して視聴率を稼ぐのが常とう手段。今回は自国開催なので生中継でも問題なさそうだが、テレビ関係者によると「無駄な時間をカットし、日本人選手中心に流した方が数字を見込める。30分もあればきれいに編集できますから」と実情を明かす。また、流血などの大ケガが発生した場合の対策という観点もあるようだ。

 すべての情報がリアルタイムで瞬時に伝わる時代。テレビ局にも諸事情があるが、いまや視聴者のイライラは〝テレビ観戦あるある〟と化している。