ムードメーカーの素顔とは――。今夏の東京五輪で史上初の銀メダルを手にした女子バスケットボール日本代表。攻撃の軸として活躍した馬瓜エブリン(26=トヨタ自動車)は、芸人顔負けのコミュニケーション能力で一躍お茶の間の人気者になった。テレビなどのメディアに積極的に出演する理由のほか、コート外での息抜き、「唯一無二」と表現する自身のキャラクターに至るまで、包み隠さず語った。

「五輪の選手になりたい」。幼少期の文集に記した夢が現実になった。東京五輪で憧れの舞台に立った馬瓜は、得意とするドライブとトム・ホーバス監督(現男子日本代表監督)の指導で磨き上げた3点シュートなどを駆使して、次々と得点をマーク。決勝で惜しくも米国に敗れたものの、歴史に新たな1ページを刻んだ。

 馬瓜=五輪のために14歳で日本に帰化しましたし、両親にも協力をしてもらって、恩返しをしたいっていう思いが常々あったので、本当に良かったです。(監督の練習は)想像を絶するしんどさでしたけど、コート外ではおちゃめでみんなもすごく親しみやすかったと思います。五輪が終わった後にロッカールームで自分に「厳しいこともいっぱい言ったけど、付いてきてくれてありがとう」と言ってくれて、最後の最後にやっぱり愛情を感じました。

 五輪後は、16日に開幕したWリーグに向けた練習に励む傍ら、メディアにも積極的に出演。テレビでは持ち味の明るい性格とお笑い好きを生かした一発芸やコントで注目を集めた。視聴者から「芸人になれるのでは?」との声も飛び交うほどだが、当の本人は毎回緊張しながら出演に臨んでいるという。

 馬瓜=テレビ慣れはしていないですね(笑い)。バスケットと同じで失敗はたくさんするだろうけど、自分を出して失敗していかないと学べない部分もありますし、自分を通してバスケットってこんなに面白いのか、いろんなメンバーがいるんだなと思ってもらえたら。でも、芸人さんにはなれないですよ(笑い)。芸人さんは本当に面白いことを探し続けている大変な職業。本当にプロフェッショナルです。私もバスケットを突き詰めてやってきましたけど(プロの芸人は)努力の量が全然違うので、そこはちょっと自分にはできないですね。

 何事も失敗を恐れずにチャレンジし、貪欲にスキルアップを目指す一方で、時には息抜きの時間も必要だ。そんな時は、今はやりのソロキャンプで心身の疲れを癒やす。

 馬瓜=ちょっと自然の中に身を置こうと、去年からキャンプを始めました。何もしないでたき火を見て、満天の星空の下で何も考えない時間が最高です。愛知県内がメインで豊田市や田原市だったり、岐阜県にも行ったりします。一番おいしかった料理はお好み焼きですかね。スンドゥブ鍋もおいしいです。ああいうところで食べたら何でもおいしいですね(笑い)。

 日本で生まれ育った馬瓜は、ガーナ出身の両親を持つ中で、日本とガーナの文化が混在する環境で生活してきた。まだまだ〝多様性〟への理解が乏しい日本で様々な壁にぶつかってきたからこそ、自身のプレーを通して発信したい思いがある。

 馬瓜=女子バスケットの選手で感情を試合中でも試合外でも、むき出しにしてむちゃくちゃ喜んで、チームを鼓舞する選手はなかなかいないと思っていて、そういった意味では唯一無二なのかなと自分自身では思います。それは自分自身を大切にしてしっかりと自分の魅力を理解して生きているからだと思うので、そういったところをいろんな方に見てもらえたらと思います。

 今回の大躍進はゴールではなく、あくまでスタートライン。女子バスケットボール界と馬瓜の旅路はまだ始まったばかりだ。

☆まうり・えぶりん 1995年6月2日生まれ。愛知出身。14歳の時にガーナ出身の両親とともに家族全員で日本国籍を取得。バスケの名門・桜花学園高(愛知)で高校3冠を達成した。また、U―17日本代表に選出され、世界選手権4強入りを果たした。高校卒業後はWリーグのアイシン・エィ・ダブリュ(現アイシン)を経て、2017年からトヨタ自動車でプレー。東京五輪では得意のドライブを武器に大活躍。日本の銀メダルに大きく貢献した。181センチ、79キロ。