白鵬に “W世界最強戦士育成”の壮大プラン 偉大な父を生んだ母国レスリング界再興の夢

2021年10月04日 06時15分

父親ムンフバト氏(右)に祝い酒を注がれ、笑顔の白鵬(2011年=東スポWeb)
父親ムンフバト氏(右)に祝い酒を注がれ、笑顔の白鵬(2011年=東スポWeb)

 大相撲の第69代横綱白鵬で現役を引退した間垣親方(36)が、土俵と五輪マットで〝ダブル世界最強戦士育成〟に乗り出す可能性が浮上した。同親方は宮城野部屋付きの親方として、指導者としてのキャリアを本格的にスタートさせる。「最強横綱」と称された自身の後継者の育成に注力する一方で、いつの日にか…と心に秘めてきたもう一つの夢があるという。


 歴史をつくった大横綱の引退に、各方面からねぎらいの声が上がっている。長年親交がある日本レスリング協会の富山英明会長(63)は「やろうと思えばあと10勝だってできたと思う。それは強いですから。でも、あれだけの功績を残した横綱。ボロボロになるまでやってほしくはなかった」と今回の決断を支持した。

 モンゴルとは大きく文化が異なる日本で、苦労しながら相撲の技術と精神を磨き上げ、現在の地位に上り詰めた。多国籍の角界で後進を指導する存在としては、これ以上ない適任者だろう。その横綱は以前に、いつかはやってみたい「夢」として、富山会長にポツリと語ったことがあったという。

「親父さんも活躍したモンゴルのレスリングを、もっと強くしたいと話していた。いつかは自分がモンゴル協会の会長になって、立て直してみたいと」

 間垣親方の父・ムンフバト氏(故人)は、モンゴル相撲の元横綱で、同国の国民的スポーツイベント「ナーダム」を6度も制した偉人だ。レスリングでも1964年の前回東京五輪に初出場。68年メキシコ五輪では銀メダルを獲得し、同国初の五輪メダリストとして国民的英雄となった。胸にはいくつもの勲章を下げ、多くの人から尊敬を集めていたという。

 間垣親方自身も父と、父が出場した五輪をリスペクト。2度目となる今年の東京五輪まで現役を続け、開会式で横綱土俵入りを披露する夢を持っていたほど思い入れが深い。

 一方で、現在モンゴルのレスリングは世界トップとは言い難く、五輪金メダリストはまだ誕生してない。大相撲はもちろん、亡き父が活躍したレスリングも活性化させたいという願いを持つのは自然なこと。当面は親方業に専念することになるだろうが、長い人生で祖国のレスリング協会会長として力を発揮する可能性は十分ある。

 モンゴルレスリングと大相撲の関係は深く、先輩でライバルだった元横綱朝青龍が同国レスリング協会会長を務めたこともある。日本協会とも関係が良好で元朝青龍や間垣親方、ブルガリア出身で元レスリングのジュニア欧州王者の鳴戸親方(元大関琴欧洲)も、来賓として大会観戦に訪れている。

 間垣親方は2019年9月に日本国籍を取得。しかし、現在ナイジェリア協会会長をナイジェリア出身のカナダ人であるダニエル・イガリ氏が務めているように、レスリング界では外国人会長は珍しくない。また、会長が難しくとも、強化やサポートで協力することは十分可能だろう。

 両方の世界に携われば、強いレスラーを大相撲に送り込むこともより自由になり、さらに太いパイプづくりにもつながる。いつの日か角界でも五輪でも、自ら育て上げた〝世界最強戦士〟が同時に活躍する日がやってくるかもしれない。

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