前代未聞の事態となるのか!? 東京パラリンピックは5日に閉幕する。東京五輪が7月23日に開幕してから約1か月半、新型コロナウイルス感染爆発の中で続いた「オリ・パラ」がいよいよフィナーレを迎えるが、本紙は今大会にまつわる「ユーキャン新語・流行語大賞」の候補ワードを調査。選定する「現代用語の基礎知識」の出版元・自由国民社や同大賞事務局などを取材すると、なんとアスリート以外のワードばかりが浮上した。しかも最有力は“あの人”のセリフだというから驚きだ。

 五輪といえば、毎度のようにアスリートが発した流行語が誕生。直近の2018年平昌大会では、カーリング女子日本代表チームのメンバーが試合中に口にした「そだねー」が年間大賞に輝いた。過去には競泳・北島康介の「チョー気持ちいい」(04年アテネ)、「何も言えねー」(08年北京)、柔道・田村亮子の「最高で金 最低でも金」(00年シドニー)、女子マラソン・有森裕子の「自分で自分をほめたい」(96年アトランタ)などが受賞し一世風靡した。

 だが今回は状況が違う。新型コロナウイルス禍で開催に懐疑的な世論が多く、選手たちは慎重な発言に終始。そのため“アスリート発”のフレーズがほとんどない。今のところ自由国民社の編集部内ではスケートボード解説者の瀬尻稜氏がテレビ中継で発した「ゴン攻め」「ビッタビタ」が有力視されているという。

 その一方で、開催前から批判を浴び続けた運営サイドを揶揄(やゆ)する言葉も目立つ。ノミネート語の選出に携わる関係者によると、菅義偉首相や大会組織委員会・橋本聖子会長が多用して世間の反発を受けた「安心安全」「コロナに打ち勝った証し」、国際オリンピック委員会のトーマス・バッハ会長を表した「ぼったくり男爵」を推す声が多い。いずれにしても「選手以外」のワードが主流となっている。

 そんな中、年間大賞とささやかれているのが組織委前会長、森喜朗氏の“女性蔑視発言”だ。今年2月の日本オリンピック委員会(JОC)評議員会で「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」と発言。これが世界中から大バッシングを浴びた上に、引き金となってドロ沼の会長交代劇に突入した。同時に「ジェンダー平等」「多様性と調和」への流れを加速させ、皮肉にも五輪の存在意義が見直される結果となった。

 選定関係者からは「いろんな意味で大会を象徴するセリフ」「ネガティブだが、選ばざるを得ない」との意見が出ている。また森発言から派生した「わきまえない女」、ソフトボール選手の金メダルをかじった河村たかし名古屋市長の「メダルかじり」も候補に挙がっているという。自由国民社の大塚陽子編集長は「今年の五輪は特殊な開催。批判が多かった運営面とアスリートの活躍は別々に考えないといけない。見ている側もコロナ陽性者数の後に金メダル数を聞かされ、気持ちの整理がつかなかったのではないか」と総括している。

 10月から選出作業に入り、11月にノミネート語を公表。いったい12月の表彰式にアスリートは何人いるのか。まさか檀上の主役が森氏だったりして…。