【東京パラリンピック】亡き母のために 陸上・大矢勇気が銀メダル「喜んでくれていると思う」

2021年09月03日 13時42分

男子100メートルで銀メダルを獲得した大矢(ロイター)

 東京パラリンピック・陸上競技(3日、国立競技場)、陸上男子100メートル決勝(T52)が行われ、初出場の大矢勇気(39=ニッセイ・ニュークリエーション)が17秒18で銀メダルを獲得した。

 亡き母に捧げるメダルだ。定時制高校に通いながら働いていた16歳の頃に、ビルの解体現場で転落。下半身不随となり、車いす生活となった。当初は車いすバスケットボールに取り組んでいたが、陸上に転向。「レーサー」と呼ばれる競技用車いすを母に買ってもらい、世界を目指して練習に取り組んできた。

 しかし、2011年に母は肺がんのため62歳で亡くなった。当初は落ち込んだが、兄のサポートを受けながら努力を続けた。大矢自身も14年には床ずれで皮膚が壊死。座骨に細菌が入ってしまい、骨を削る手術を余儀なくされた。一時は陸上から離れたものの、17年4月に復帰後は着実に記録を伸ばした。7月にはアジア記録を更新。東京大会でのメダルが現実味を帯びてきた。

 特別な思いを胸に挑んだ今大会。決勝のレースは得意のスタートで飛び出すと「今まで中間が苦手で課題にしてきたけど、そこはコーチと二人三脚で練習してきた効果で伸びていけた」と力強い走りを披露した。終盤はレーモンド・マーティン(米国)に逆転を許したが、2位でフィニッシュ。

「自分が出せる力を発揮できたと思っているが、マーティン選手に負けてしまったので少し悔しい。」と振り返った上で「本当は金メダルを取って10年前に車いす陸上を始めるきっかけとなった母親が亡くなってしまって、その恩返しで金メダルを取るって約束した。ちょっとメダルの色は違うが、それでも喜んでくれていると思う」と神妙に語った。

 テッペンにはあと一歩届かなかった。ただ、その姿はきっと天国の母にも届いただろう。

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