【赤坂英一 赤ペン!! 】「女子ソフトボール、金メダルを取れてよかったですね! 僕の母校の後輩も頑張ってくれました」

 宇津木ジャパンの13年越し五輪連覇に、意外な人物が熱い祝福の声を寄せている。プロ野球の巨人、中日で24年間プレーし、二軍監督やヘッドコーチなども務めた川相昌弘氏だ。

 川相氏の「後輩」とは、全6試合にスタメン出場し、優勝に貢献した右翼手・原田のどか(29=太陽誘電)のこと。外野守備はチーム随一、かつ「声出し番長」と異名を取る盛り上げ役でもあった。

 その原田は、川相氏と同じ岡山出身で、川相氏が甲子園に出場した岡山南の卒業生なのだ。同校からソフトボール代表、および金メダリストが生まれたのは初めてのこと。

「岡山南のソフトボール部は、僕の在学中も強かった。これで、母校から“世界一”の選手が2人出たことになりますね」

 プロ野球で通算533個の世界犠打記録を持つ川相氏は、そう冗談めかして笑った。原田と直接の面識はないが、ともに岡山出身の聖火ランナーのPR動画に出演。原田の存在はかねて認識していただけに、感慨もひとしおだったという。

 その川相氏、以前からソフトボールとは長くて深い縁がある。日本代表が初めて優勝した2008年北京五輪でショートを守った名選手・西山麗(37=日立製作所)には、中高生時代にスイングの指導をしていたという。

「西山さんは、僕がよく通っていた釣り船店の娘さんです。船釣りが終わったあとに、港で彼女の素振りを見てました」

 さらに、今年2月下旬の沖縄キャンプ中、川相氏は宜野座で阪神の臨時コーチを務めた後、北谷で練習をしていたビックカメラ高崎を訪問。岩渕有美監督(42)、宇津木麗華・日本代表監督(58)に頼まれ、選手にバントの指導を行っている。

 川相氏のほうも、優秀な内野手を育成しているビックカメラの守備練習に着目。「ハンドリングなどを参考にしてほしいから」と、スマホで練習の動画を撮り、阪神の内野手たちのグループLINEに送ったそうだ。

「宇津木監督にもお話をうかがい、ノートに取りました。投手力を中心に、守備力を完璧にしないと世界では勝てないと監督は言っていました。実際、オリンピックもそういう試合を続けて、金メダルを取ったんですよね」

 ちなみに、母校の後輩・原田は初戦から5試合連続無安打。それでも、守備力を買う宇津木監督はオーダーから外さず、原田は決勝で唯一のヒットを打ったのだった。 

☆あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」「プロ野球二軍監督」「プロ野球第二の人生」(講談社)などノンフィクション作品電子書籍版が好評発売中。「失われた甲子園 記憶をなくしたエースと1989年の球児たち」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。ほかに「すごい!広島カープ」「2番打者論」(PHP研究所)など。日本文藝家協会会員。