ベラルーシの反政権活動家が遺体で発見され、東京五輪出場後にポーランドへ亡命した陸上女子のクリスツィナ・ツィマノウスカヤ(25)の身を案じる声が上がっている。

 ツィマノウスカヤはリレーへの出場を巡ってコーチを批判し、代表チームから帰国命令が出た。だが空港で帰国を拒否し「投獄されるかもしれない」などと訴えて亡命の意思を表明。4日に亡命先のポーランドへ向けて出国した。

 そうした中、衝撃的な事件が発生した。ベラルーシの反体制活動家で亡命者の支援団体「ウクライナのベラルーシの家」代表のビタリー・シショフ氏(26)が2日朝にジョギングへ出かけたまま行方不明となり、3日になって自宅近くの公園で首を吊った状態で遺体で発見されたのだ。

 東欧メディア「ラジオフリーヨーロッパ」は「ウクライナ警察は計画的殺人として刑事訴訟の準備を進め、自殺を装った殺人の可能性を含み調査している」と報道。殴打による骨折や擦り傷など争った痕があるため、殺人事件の可能性が高まっている。

 シショフ氏が代表を務めていた団体は「これは一般的なKGB(治安機関)のやり方だ。彼は顔を殴打されて〝絞首刑〟にされた。ベラルーシのKGB諜報員のネットワークがこの辺りでも運営されており〝何でもできる〟ため、ウクライナ当局からも注意するよう警告されていた」と説明。同氏はアレクサンドル・ルカシェンコ大統領による独裁政権に反対する活動家として有名で、事件の背後に政権の存在を主張した。

 シショフ氏の遺体発見を受けて恋人はSNS上で「ベラルーシから逃げる人々が、まだ安全ではないことが心配だ」とベラルーシからの亡命者に呼びかけ。ちょうどツィマノウスカヤが亡命を表明したタイミングでの事件発生だけに、ネット上では「東京五輪で選手が亡命したから見せしめか」「(亡命先の)ポーランドは大丈夫なのか」と今後を心配する声が上がった。

 ツィマノウスカヤの身の安全を願うばかりだ。