五輪期間中恒例の国際オリンピック委員会(IOC)選手委員選挙の結果が4日発表され、日本フェンシング協会前会長で同競技の五輪2大会連続銀メダリスト・太田雄貴氏(35)が日本人初の当選を果たした。4人の退任に伴う改選で、東京大会出場選手による投票が7月13日から8月3日まで選手村や分村などで行われていた。

 選手委員には選挙枠と指名枠があり、選挙枠は夏季・冬季の五輪に合わせて改選されている。今回は五輪メダリストを中心に30人の現役・元アスリートが立候補。4人は異なる競技から選ばれ、IOC委員を兼ねる。米プロバスケットボールNBAで優勝を経験し、五輪でもスペイン代表として2008年北京、16年リオデジャネイロ大会でメダルに輝き、東京大会にも出場したパウ・ガソル、テニスの錦織圭のコーチとしても知られる同競技のロンドン五輪混合ダブルス優勝、男子ダブルス全米オープン優勝などのマックス・ミルヌイ氏らが立候補していた。

 投票結果はIOCが記者会見で発表。トップ当選は1888票のガソルで、太田氏は1616票を獲得して4番目に滑り込んだ。

 日本にとって選手委選は〝鬼門〟だった。00年シドニー大会時のテニス・松岡修造氏、その後も「キング・オブ・スキー」こと荻原健司氏、ハンマー投げ男子でアテネ五輪を制した室伏広治氏と名だたるアスリートが挑むも敗れ、12年ロンドン大会の室伏氏は選挙違反を指摘されて当選無効(責任は日本オリンピック委員会=JOC=にあるとスポーツ仲裁裁判所=CAS=が指摘)となる苦い経験もあった。

 今回、太田氏は満を持しての出馬。競技実績に加え、13年のIOC総会(アルゼンチン・ブエノスアイレス)では東京の五輪招致チームの一員としてプレゼンテーションで演説し、東京の魅力と若者のスポーツ参加を訴えた。当時から、IOC委員を目指すなどの意向を周囲に漏らしていたといい、まさに打ってつけの人材だった。

 太田氏の当選により、日本のIOC委員は渡辺守成・国際体操連盟会長と山下泰裕JOC会長に加えて3人となる。選手委員会は五輪運動の意思決定に選手側の視点を反映させるなどの目的で設置されており、開催候補地の評価や大会運営をチェックすることなどができる。

 日本のスポーツ界ではかねて国際競技団体の役員が少ないことが問題視され、JOCなどは幹部ポストに就ける人材の育成にも注力してきた。太田氏の当選は、スポーツ政治の世界における金メダル級の成果を上げたと言える。