歴史が動いた。フェンシング団体男子エペ決勝(30日、幕張メッセ)で、日本がロシアオリンピック委員会(ROC)を45―36で破り、日本史上初の金メダルに輝いた。選手ら関係者一同が歓喜に沸く中、中でもウハウハだったのが生中継したフジテレビだ。たまたま持っていた放送権が〝大化け〟し、現場は「大当たり!」とガッツポーズ。しかし、ある失態でミソをつけてしまうことに…。歓喜の瞬間をめぐるドタバタ劇の舞台裏を追跡した。

 会場内は無観客とは思えないほどの大興奮に包まれた。勝利の直後、主将の見延和靖(34=ネクサス)、山田優(27=自衛隊)、宇山賢(29=三菱電機)、加納虹輝(23=JAL)の4人は抱き合って「やったー!」と雄たけび。見延は「絶対に金メダルを取るんだって未来を描き、想像通りの未来が今日きた。信じられない」と喜びを爆発させた。

 6月に日本フェンシング協会の会長に就任したばかりのタレント武井壮は「日本のフェンシングの歴史が、太田(雄貴)前会長のメダル以来また一歩前進しました」。その太田前会長も、ミックスゾーンに現れると「最高ですよ、悲願!」と興奮を隠し切れない様子だった。

 そのお祭りムードの中で、ひそかにニンマリしていたのが中継局のフジテレビだった。多岐にわたる五輪競技の中でもフェンシングの地上波放送は異例中の異例。NHKと民放各社は2019年12月に五輪競技の放送権を抽選で振り分ける〝ドラフト会議〟を行ったが、たまたま持っていた競技が大ヒットしたのだ。太田前会長も「フジテレビ、そして武井会長は持ってますよ!」と舌を巻くほどの幸運だった。

 しかも、フジはバドミントン男子シングルス決勝の放送枠を保有。全競技を通じて最も金メダルの可能性が高いとも言われた桃田賢斗(NTT東日本)が1次リーグで敗退する悲劇を味わっていただけに、今回は〝桃田ショック〟を払拭する会心の一撃となった。

 しかし「好事魔多し」ということか。優勝決定後、スタジオに映像が戻った際にメインキャスター・村上信五らの上部に4選手の写真が映し出されたのだが、見延、山田、宇山と並んで、なんと韓国の朴相永の顔が…。

 CM後、女性アナウンサーが「先ほどスタジオで皆様にお見せした写真の一部に誤りがありました」と頭を下げて謝罪。まさかの〝人違い〟というオチをつけてしまった。

 とはいえ、フジは決して「メジャー競技」とは言えないフェンシングを地上波で果敢に中継し、お茶の間に歓喜の瞬間を届けたのは事実。今後は競技への関心が高まることは確実で、競技への貢献度は計り知れない。

 山田も試合後に「もっとフェンシングを普及させたい!」と目を輝かせていたが、金メダルの快挙がさらなるメジャー化へのきっかけとなりそうだ。